研究課題/領域番号 |
19K05891
|
研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
仲谷 正 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 主幹研究員 (90300996)
|
研究分担者 |
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30332448)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ピロリジジンアルカロイド / 蜂蜜 / 茶 / 植物 / LC-MS/MS |
研究実績の概要 |
本研究では植物を由来とする各種食品中のピロリジジンアルカロイド(PA)汚染の実態を明らかにし、安全性評価を行うと共に、食品中を汚染している各種PAの組成解析を通じて汚染メカニズムを解明することにより食品中のPA汚染の軽減を目指すものである。 本年度は主にドイツ連邦リスク評価研究所が公表しているBfR法を基に新たに開発した試料溶液調製法を用い、蜂蜜中のPA含有量について27成分を対象に調査を行い、得られた結果より蜂蜜摂取を通じたPA暴露量の推定を行った。その結果、調査対象とした蜂蜜の90%以上がいずれかの種のPAにより汚染されていた。一方、その汚染レベルは、極微量(中央値 0.36 ng/g、平均値 2.4 ng/g)と判断された。今回の調査結果の中で最も総PA濃度が高かった蜂蜜を日常的に摂取した場合についてヒトへの発がんリスクを推定するため、平成22年度食品摂取頻度・摂取量調査の特別集計業務報告書(厚生労働省)公表値を用い各世代間の暴露マージン(MOE)値を算出したところ300,000以上と試算された。暴露マージンの値が10,000以上の場合、ヒトへの発がん影響の懸念は低いとされているため、市場に流通する蜂蜜のPA汚染レベルはただちにヒトの健康に影響をおよぼすレベルではないと考えられる。 今回の調査では、LC-MS/MS分析時において、ある種のPAに対し妨害ピークをクロマト上生じさせる試料にいくつか遭遇した。この問題を解決するため移動相の組成について再検討を行った結果、より最適な移動相の組成条件を見出すことができた。今回検討した移動相組成は、広く用いられているものでないため、今後注目される分析法となることが期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で述べた蜂蜜中のPA汚染実態調査については、結果の精度向上を勘案し、その後、さらに試料数を増やし調査を行った。現在、先の結果と合わせ直近に完了した分析結果を含めた総合的な解析を実施している。 また茶を対象試料としたPA汚染実態調査についてもほぼ分析が完了し、その結果について解析中である。茶のPA汚染実態調査では、入手可能なPA標準物質を参照としたターゲット分析を行った他、ノンターゲット分析も行っており、その結果についても解析途中である。 当施設は今年度移転を控えており、昨年度はその準備に予定外の多くの時間が消費されたため、昨年度に終了するはずであった本研究は、一年間の延長が余儀なくされた。
|
今後の研究の推進方策 |
予定していた実験内容については昨年度ほぼ終了しているため、今年度は分析結果の解析が主となると考える。解析終了後、汚染レベルが高かった試料やPA組成が特徴的な試料が見出された場合、別ロットの試料を入手し、追加実験を行うことにより、その原因究明を進める予定である。 ノンターゲット分析では、物質の同定手法について、従来どおりのフラグメントパターンの解析のみを構造決定のプロセスとするのでなく、構造解析支援アプリケーション等を用い、構造決定のプロセスの効率化を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当所独特の事情ではあるが、今年度に施設の移転を控えており、昨年度はその準備等が極めて多忙であったことにより予定していた実験が十分にできなかったため、消耗品執行額が予定より低くなった。また情報収集や研究成果の発表を目的とした学会出張もWeb開催であったため、旅費執行ができなかった。 今年度(延長一年目)中には実験終了予定しているため、試薬類、統計解析ソフトの購入により大幅な予算の執行は可能と考える。
|