研究課題/領域番号 |
19K05891
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
仲谷 正 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 主幹研究員 (90300996)
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研究分担者 |
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30332448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ピロリジジンアルカロイド / 蜂蜜 / 茶 / 植物 / LC-MS/MS |
研究実績の概要 |
2022年度は1) 蜂蜜中で検出されたPAの汚染源となった植物種の推定、2) 茶中におけるPAの再分析、3) 食用可能とされているがPA含有の恐れがある植物種のPA含有量の調査を実施した。 1)これまでに実施した蜂蜜中のピロリジジンアルカロイド(PA)汚染実態調査結果を基に、蜂蜜中ののPA濃度組成を解析することにより汚染源の可能性がある植物種の推定を行った。PA含有植物のうちそれぞれの科特有のPA種を、指標PAに設定して解析を進めた結果、分析した試料の55.2%はムラサキ科、15.0%はキク科を汚染源とし、29.4%はムラサキ科およびキク科の両植物種を汚染の起源とすることが推定された。またキク科植物を汚染の起源と推定した試料の多くは、キク科ツワブキ属またはフキ属を汚染起源とすることが推定された。得られた結果は2022年11月に第118回食品衛生学会学術講演会にて発表した。一方、外国産蜂蜜についてはPA濃度組成が国産のものより複雑なため、解析方法を考察中である。 2)茶中のPA測定結果を解析したところ、これまでの活用してきたLC-MS/MS測定条件ではクロマト上で夾雑物が十分除去できない数試料に遭遇した。そこで昨年度開発した新なLC-MS/MS測定条件を用いて再分析を実施し、茶中のPA含有量について高い精度で定量を行った。 3)20試料に対しPA含有量の調査を行った。調査は標準物資を指標としたターゲット分析に加え、PA特有のMSフラグメントパターンを指標としたノンターゲット分析を行い、各種データの解析は進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに1) 食品試料を対象とした新規PA分析法の開発、2) 蜂蜜中のPA汚染実態調査とヒトへの安全性評価、3)蜂蜜中のPA汚染源となる植物種の推定を行った(いずれも学会発表済)。現在は茶および数種の栄養補助食品中のPA汚染実態調査とヒトへの安全性評価、および一般には食用可能とされているがPA含有植物の恐れがある植物中のPA含有量調査が進行中である。 研究が当初の目的に対しやや遅れている原因として、計画当初予定していた分析法が研究途中で、多種多彩な成分を含む各種食品について十分対応しきれないことが判明し、その都度改良を行ったこと、コロナ下において研究活動に制限が生じたこと、研究所の移転およびその準備で予想以上の時間が費やされたことが理由として考えられる。一方、改良を重ねた新規分析法は、精製効果も高く、精度の高い定量が可能なものであることから、これまで論文発表されているいずれの分析法に比べ、高性能のものであることが考えられる。また我国において知見不十分下にある蜂蜜中のPA含有量に関する本研究結果は、食の安全性の観点から有意義な基盤情報になるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は1)茶および栄養補助食品中のPA汚染実態調査、および一般には食用可能とされているがPA含有の恐れがある植物中のPA含有量調査を終了し、2)1)の結果から短期・長期的なリスク評価を行う。また3)茶のPA汚染実態調査で得られたPA濃度組成を解析し、汚染源の推定を行う。すでに各試料のLC-MS/MS測定は終了しており、各データの解析は実行中である(今年度学会発表予定)。また蜂蜜中のPA汚染実態調査に関する各種データを今年度中に論文投稿する。 本研究課題における達成目標のひとつ挙げる新規分析法開発は、当初、効率的精製法以外のほか、多種多彩な基本骨格を有するPAの含有量調査に適用可能な方法、すなわち半定量法も組み入れた手法を想定していたが、取得データの解析が十分でなく期間内での達成が難しくなってきている。この点については引き続き解析を継続しつつ、特定な構造を有するPAのみに適用可能な方法の構築を最優先とし、取りこぼした課題点ついては、次回申請時に解決したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020~2021年度のコロナ下に最中においては、予定していた学会出張がすべてオンライン開催なったことにより旅費の執行が滞ったことに加え、昨今の世界情勢により購入予定の標準品の供給が遅延したことが研究期間全般において経費執行の遅延に繋がっている。また昨年度は、研究所移転が研究計画に大きく影響し、結果的に経費執行計画に支障を及ぼした。次年度使用の経費は、本研究と関連する分野の国際学会参加費、標準品の購入、論文投稿経費、仕様している機器のメンテナンス費用、および一般的な消耗品の購入を計画している。
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