研究課題/領域番号 |
19K05891
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研究機関 | 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所 |
研究代表者 |
仲谷 正 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 衛生化学部, 主幹研究員 (90300996)
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研究分担者 |
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30332448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ピロリジジンアルカロイド / 蜂蜜 / 茶 / LC-MS/MS / 暴露マージン |
研究実績の概要 |
2023年度は1) 茶葉中におけるPA汚染実態調査より得られた結果より推定されるヒトへの安全評価、2) 2022年度より継続し食用可能とされているがPA含有の恐れがある植物種の PA含有量の調査等を実施した。 1)では、店頭・インターネット購入したハーブティーおよび健康茶と称される茶葉の乾燥品97試料を対象に調査を行った。その結果、72試料からいずれかのPAが検出された(検出率74%)。この結果を基にティーカップ1杯(150 mL)の茶葉浸出液を、成人が日常的に摂取すると仮定した場合のヒトへの安全評価を行った。安全評価の方法には、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)が設定したリデインのBMLD10との比較により算出する暴露マージン(MOE)(10,000以上:ヒトの健康への懸念は低い値)を用いた。算出の結果、ティーカップ1杯程度では、いずれの茶葉製品もヒトの健康への懸念は低いものであったが、過剰な摂取(ティーカップ5杯以上)を日常的に行った場合、ヒトの健康への懸念がある製品が、今回の調査対象試料の中にも数種見出された。本結果は2023年10月に第119回食品衛生学会学術講演会にて発表した。なお茶中におけるPA汚染実態調査および推定されるヒトへの安全評価は、本研究結果が国内初となる。 2)では新に10試料を対象試料に加え、ターゲット分析およびノンターゲット分析を実施し、結果の解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに1) 食品試料を対象とした新規PA分析法の開発、2) 蜂蜜中のPA汚染実態調査とヒトへの安全性評価、3)蜂蜜中のPA汚染源となる植物種の推定、4) 茶葉中におけるPA汚染実態調査とヒトへの安全評価を行った(いずれも学会発表済)。現在は食用可能とされているがPA含有植物の恐れがある植物中のPA含有量調査が進行中である。ここでは一般的な分析手法であるターゲット分析に加え、ノンターゲット分析も行っており、ノンターゲット分析で利用するデータベースも併行して構築中である。 研究が当初の目的に対しやや遅れている原因として、計画当初予定していた分析法が研究途中で、多種多彩な成分を含む各種食品について十分対応しきれないことが判明し、その都度改良を行ったこと、コロナ下において研究活動に制限が生じたこと、研究所の移転およびその準備で予想以上の時間が費やされたことが理由として考えられる。一方、改良を重ねた新規分析法は、精製効果も高く、精度の高い定量が可能なものであることから、これまで論文発表されているいずれの分析法に比べ、高性能のものであることが考えられる。また我国において知見不十分下にある食品中のPA含有量に関する本研究の成果は、食の安全性の観点から有意義な基盤情報になるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は1)茶葉中のPA組成の解析から茶葉中のPA汚染源の推定、2)PA含有の恐れがある植物中のPA含有量調査(ターゲット・ノンターゲット分析)を行い、3) これまで得られた結果をもとに、食品中のPA汚染について総合的解析を行う。すでに各試料のLC-MS/MS測定は終了しており、各データの解析は実行中であるが、データの精度を高めるため、追加測定も予定している。またすでに学会発表を行った成果については、論文作成中である。 上記2) のノンターゲット分析結果の解析では、ここで活用するデータベースの構築(LC-MS/MS分析特有の生成イオンの情報により構築されたもの)が必要となるが、その進行が遅れている。この点については、さらに文献情報を収集すると共に、機器メーカーの協力をもとに、計算化学より導きだした生成イオンの情報もデータベースのソースに活用していく。全般的に取りこぼした課題点ついては、次回申請時に解決したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020~2021年度のコロナ下に最中においては、予定していた学会出張がすべてオンライン開催なったことにより旅費の執行が滞ったことに加え、昨今の世界情勢 により購入予定の標準品の供給が遅延したことが研究期間全般において経費執行の遅延に繋がっている。また2022~2023年度は、研究所移転が研究計画に大きく影響し、 結果的に経費執行計画に支障を及ぼした。次年度使用の経費は、本研究と関連する分野の国際学会参加費、標準品の購入、論文投稿経費、仕様している機器のメンテナンス費用、および一般的な消耗品の購入を計画している。
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