研究課題
エーテルリン脂質・プラズマローゲン(Pls)は、脳神経、赤血球、腸粘膜に高レベルで存在し、内因性の抗酸化・抗炎症物質として働くことが報告されている。本研究では、食品として摂取されたPlsの腸管における機能性および代謝動態を明らかにすることを目的に以下の実験を行った。1.Plsによるin vivo大腸腺腫形成抑制:BALB/cマウスに試験食を給餌し、薬剤誘導性大腸傷害に及ぼす影響を調査した。試験食はAIN-93Gを基本とし、1%のリン脂質を添加した。リン脂質はPls(>80%)またはジアシルリン脂質(>90%)を使用した。ジメチルヒドラジン腹腔内投与により誘導される大腸腺腫形成および炎症をリン脂質摂取は抑制し、とくにPls摂取でその効果は顕著であった。2.Plsによるin vivo大腸炎症抑制:デキストラン硫酸ナトリウム飲水により誘導される大腸炎症をリン脂質摂取は抑制し、とくにPls摂取でその効果は顕著であった。また、大腸粘膜のPlsレベルは炎症により低下し、Pls摂取により増加した。3.Plsによるin vitro腸管炎症抑制:腸管モデル分化CaCO2細胞においてリポ多糖処理により誘導される細胞数減少をPlsの添加は濃度依存的に抑制した。また、処理により増加する炎症性サイトカインおよびアポトーシス関連タンパク質の発現、とくに活性型カスパーゼ3の発現をPls添加は顕著に抑制した。4.Plsの腸管代謝動態:腸管モデルへのPls添加は細胞中のPlsレベルを増加させた。続いて、マウスへの胃内投与においては、Plsまたはsn-2位の脂肪酸を切断したリゾPlsの投与は血液中のPlsレベルを増加させた。投与後のPls吸収・代謝はリゾPls投与においてより短時間であった。本研究の結果により、摂取したPlsの一部は消化・吸収されず大腸に到達し、大腸にて保護作用を示すことが示唆された。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Agricultural and Food Chemistry
巻: 69(44) ページ: 13034 - 13044
10.1021/acs.jafc.1c04420