高い抗酸化力をもった食品によるがん予防とがん治療への効果を期待し,開発され消費されているものの,抗酸化物質摂取によるがんへの有効性や抗癌剤との相乗効果においての是非は専門家でも未だ議論が分かれている.消費者である国民の抗酸化食品による期待と予防医学への関心の高まりからも,最新の研究技術を用いた抗酸化物質摂取のがん有効性の評価と機能の解明,および新評価系の確立が喫緊の課題である. これまで抗酸化物質研究の多くががん細胞と抗酸化物質との直接的な作用のみに焦点を当てたものであったが,摂食した抗酸化物質はがん細胞に到達する前に腸管から吸収され血液循環へと移行するため,生体では抗酸化物質の摂取の影響はがん細胞だけでなく全身の免疫細胞も少なからず受けるはずである.がんの増殖に伴って増加する骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)によって免疫細胞によるがん殺傷能力が抑制されるが,抗酸化物質の摂取がMDSCの増加を抑制することで免疫細胞によるがん殺傷能力が維持されることで発がんと腫瘍の増大が抑制される可能性を癌モデルマウスにおいて見出している.しかし,抗酸化物質の摂取による免疫細胞を介したがん抑制の具体的な分子メカニズムは未だ詳細を明らかになっていない. そこで本研究では,抗酸化物質の免疫細胞を介した腫瘍抑制メカニズムを探るために,抗酸化物質が免疫細胞と癌細胞のどちらに取り込まれやすいか,そして抗酸化物質が取り込まれた際の各細胞(免疫細胞・癌細胞)の質的・量的変化をin vitro実験により明らかにし,生体で実際に抗酸化物質の摂食が免疫細胞を介した癌の縮小効果が認められるか明らかにすることで抗酸化物質による癌抑制の未知なる機構を解明することを目的に,抗酸化物質の膜輸送体の遺伝子発現の変化を解析した.
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