研究課題/領域番号 |
19K05895
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
菅原 卓也 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (00263963)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Scripsin B / パッションフルーツ / 脱顆粒抑制効果 / 抗アレルギー効果 / 抗炎症効果 / Gunetin C / IgE産生抑制効果 / 構造活性相関 |
研究実績の概要 |
本研究は、パッションフルーツ種子に含まれるResveratrol、PiceatannolおよびScripusin Bといった類縁化合物の保健機能を明らかにすることを目的とし、抗アレルギー効果や抗炎症効果について詳細な研究が進んでいないScripusin Bについて作用機構や疾患モデルマウスに対する症状緩和効果を明らかにするとともに、類縁化合物との活性比較により、構造活性相関の解明に取り組むことを計画した。研究1年目の本年度は、まず、Scripusin Bの抗アレルギー効果について取り組んだ。trans-Scripusin Bおよびその類縁化合物について、ラット好塩基球細胞株RBL-2H3細胞に対するβヘキソサミニダーゼ放出を指標とした脱顆粒抑制効果 (ヒスタミン放出抑制効果) を検討したところ、trans-Scripusin Bは、細胞毒性なく濃度依存的に脱顆粒を抑制した。また、trans-Resveratrolおよびtrans-Piceatannolにも同様に脱顆粒を抑制効果が認められたものの、trans-Scripusin Bと比較して、細胞毒性が強いことが明らかになった。また、trans-Scripusin Bの作用機構を検討したところ、脱顆粒の際に生じる細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を抑制することによる効果であることが明らかになった。 これまでに明らかになっているIgE産生抑制効果に加え、ヒスタミンの放出に繋がる脱顆粒を抑制する効果が確認されたことから、Scripusin Bは、2つの異なる作用により、アレルギー症状を緩和する効果を示すことが明らかになり、パッションフルーツ種子の機能性食品素材としての有効活用に繋がる重要な基礎データを得ることができた。また、今後さらに詳細な検討が必要であるものの、作用機構を明らかにすることができ、素材の活用に大きな弾みがついた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、Scripusin Bとその類縁化合物の抗アレルギー効果や抗炎症効果などの保健機能およびその作用機構の解明に取り組んだ。ラット好塩基球細胞株RBL-2H3細胞に対するβヘキソサミニダーゼ放出を指標とした脱顆粒抑制効果 (ヒスタミン放出抑制効果) を検討したところ、trans-Scripusin B (t-Scr B)は、細胞毒性なく濃度依存的に脱顆粒を抑制した。一方、cis-Scripusin B (c-Scr B)には、脱顆粒抑制効果は認められなかった。また、類縁化合物であるtrans-Resveratrolおよびtrans-Piceatannolにも同様に脱顆粒を抑制効果が認められたものの、わずかな細胞毒性が認められた。 t-ScrBの脱顆粒抑制効果に関する作用機構を検討したところ、脱顆粒の際に生じる細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を抑制することによる効果であることが明らかになった。 次に、リポ多糖で炎症誘導したマウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞の炎症性免疫タンパク質であるインターロイキン(IL)-6の産生に及ぼすt-Scr Bおよびc-Scr Bの影響を評価したところ、両化合物に産生抑制効果が認められたことから、抗炎症効果を持つことが明らかになった。また、類縁化合物であるt-Scr AおよびGunetin Cについて検討したところ、特にGunetin Cは、c-ScrBおよびt-Scr Aと比較して、わずかな細胞毒性を伴うものの、5倍程度高い比活性を示した。これら類縁化合物の分子構造の違いは、幾何異性体あるいは1~2個の水酸基の有無といった程度であることから、位置や数が重要であることが明らかになった。 研究は、当初計画通りに進行しており、次年度以降に計画していた構造活性相関に関する検討の一部を前倒しで行うことができた。今後さらに研究を加速したい。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね計画通りに進行している。今後、当初計画通り、花粉症やアレルギー性鼻炎などのアレルギーモデルマウスや全身性炎症モデルマウスに対するScripusin Bの経口投与の効果、および類縁化合物との活性比較による構造活性相関の解明を進める。
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