本研究は、パッションフルーツ種子に含まれるResveratrol、Piceatannol、trans-Scripusin BおよびGunetin Cといった類縁化合物の保健機能を明らかにすることを目的とし、抗アレルギー効果と抗炎症効果について検討した。まず、IgE産生抑制効果についてその作用機構を明らかにするため、IgEをコードするmRNAの転写活性に及ぼす効果を検討した。その結果、これら4化合物はいずれもIgEの遺伝子発現を抑制した。中でも、最もIgE産生抑制効果が強いGunetin Cの遺伝子発現抑制作用が顕著であった。IgE遺伝子発現が抑制されたことから、転写因子NF-κBの核内移行に及ぼす影響を検討した。その結果、これら4化合物はいずれもNF-κBの核内移行を抑制し、特にGunetin CのNF-κBの核内移行抑制作用は顕著であった。これらの結果から、転写因子の核内移行の抑制によりIgE遺伝子発現が抑制され、産生量の低下に繋がったと結論づけた。また、NF-κBは、マクロファージに対する炎症誘導においても核内移行が促進されることから、これら化合物の抗炎症効果もNF-κB の核内移行の抑制による効果であると推察された。 アレルギー性鼻炎モデルマウスに対するtrans-Scripusin BとPiceatannolの経口投与効果について、前年度に引き続き解析を進めたとことろ、血中IL-4濃度において、コントロール群に対して有意差は認められなかったものの、trans-Scripusin BおよびPiceatannolの経口投与により、非感作群と同レベルまで低下することが確認された。また、血中IFN-γ量については、trans-Scripusin Bの投与により低下していたことから、これら化合物は、生体内で抗原誘導性の免疫応答に何らかの影響を及ぼしていると推察された。
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