研究実績の概要 |
ホスホリパーゼA (PLA) は、リン脂質をリゾリン脂質と遊離脂肪酸に加水分解する酵素であり、リゾリン脂質の製造や油脂の精製等で広く産業利用されている。しかし、既存PLAは宗教面や病原性の問題及び大量調製の困難さ等の理由から代替酵素が求められている。 本研究室では、以前、新規PLA (PlaA) を産生する好熱性細菌Caenibacillus caldisaponilyticus B157T株を単離した。PlaAはC末端側にpro配列を持つ不活性型 (PlaA-Cpro) として分泌され、細胞外で活性型へとプロセシングされる。本研究では、組換えPlaA-Cpro (rPlaA-Cpro) を大腸菌で発現し、in vitroでプロセシングすることで活性型組換えPlaA (rPlaA) の大量調製に成功した。本酵素における種々の解析を行った。その結果、rPlaAは、広域のpH・温度で安定 (pH 3.0-12.0, 0-65℃) かつ高活性 (pH 6.0-11.0, 60-70℃) であり、sn-1位に選択性が高い、PLA1であることを確認した。また、本酵素は遊離した基質には作用せず、基質や界面活性剤の会合状態を認識して活性が増加するinterfacial activationを有していた。また、Mg2+、Mn2+、Ca2+存在下では活性が有意に上昇した。数種のリパーゼ阻害剤の影響を調査した結果、Ser修飾剤の一つである methyl arachidonyl fluorophosphonateの添加で活性が有意に低下した。また、部位特異的変異導入法を行うことによって、触媒残基Serを特定した。さらには、有機溶媒を使用せずに、レシチンとメタノールから脂肪酸メチルエステルを生産できることやレシチンの脂肪酸を中性脂質の脂肪酸を交換できることを明らかにした。
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