研究課題
日本人の5人に1人が不眠で悩んでおり、睡眠障害による経済損失は最大15兆円にのぼると試算されている。これまでの研究において、マウスに通常食を給餌すると活動期の暗期に餌を食べるのに対し、ラード含有高脂肪食を給餌すると活動期・非活動期を通じて断続的に餌を食べ続ける「ダラダラ食い」となることや、高脂肪食給餌により体重が顕著に増加したことから、体重増加と明期の摂餌行動の間に因果関係があることを見出してきた。非活動期の摂餌行動は睡眠不足につながると予想されたため、活動期の明期12時間高脂肪食を給餌するマウスと非活動期の暗期12時間高脂肪食を給餌するマウスの体重増加に及ぼす影響を評価した。その結果、非活動期に高脂肪食を給餌したマウスは活動期に高脂肪食を給餌したマウスと比べて体重増加が認められた。また、水への不安感と回転ケージの揺れを利用したPAWWストレス(Perpetual Avoidance from Water on a Wheel)を与えたマウスに高脂肪食を給餌し、睡眠障害が高脂肪食による体重増加に及ぼす影響を評価した。回転ケージを用いてマウスを飼育すると運動量が増加した結果、高脂肪食給餌による体重増加が抑制されたが、PAWWストレス負荷マウスでは運動量が増加したにもかかわらず体重が増加した。以上の結果は、食餌やストレスにより睡眠が阻害される状況下では高脂肪職給餌による肥満病態が悪化することを示唆している。今後、さまざまな方法で睡眠を阻害したときに認知機能にどのような影響を及ぼすか、薬剤投与による認知機能障害モデルやアルツハイマー病モデルマウスを用いて評価することで、睡眠障害と認知機能障害の関係性を解明することが必要である。
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