本研究では、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)のモデルマウスに豆乳の乳酸菌発酵ろ液(以下、本発酵ろ液)を摂取させた結果、これまでにNASHの進行が抑制されることを明らかにしている。この本発酵ろ液が示したNASH改善作用の根拠については未だ検討の余地を残しているところであるが、プレバイオティクス作用やバイオジェニックスとしての機能を有する本発酵ろ液によって、腸内細菌叢のバランスが改善されたことが一因であると示唆されている。 近年、DNAアレイ解析やメタボローム解析によって、NASHの病態に対する食品や食品成分の影響に関する知見が数多く報告されている。そこで、本研究においても、本発酵ろ液が肝臓に及ぼした影響について分子レベルでの解明を図るために、NASHモデルマウスを用いた動物実験の解剖時に回収した肝臓を対象として、DNAマイクロアレイ解析を行うこととした。 得られた膨大なデータを解析した結果、コントロール群においては、脂質合成に関与する遺伝子群に亢進の傾向が示され、脂肪肝を経てNASHの誘導に至った過程が明らかにされた。一方、本発酵ろ液を摂取したマウスでは、脂質合成系遺伝子のいくつかに発現の抑制が見出されただけでなく、エネルギー代謝を調節するホルモンに関する遺伝子においても、有意な変動が生じたことが明らかになった。これらのことから、本発酵ろ液が複数のパスウェイに対する影響を介して、脂質代謝やNASH病態を改善したことが示唆された。
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