研究課題/領域番号 |
19K05903
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
角川 幸治 広島工業大学, 生命学部, 教授 (60441507)
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研究分担者 |
田中 武 広島工業大学, 工学部, 教授 (10197444)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマベース注入法 / 殺菌 |
研究実績の概要 |
複合ガスを用いたプラズマベースイオン注入(PBII)法を用いた食品殺菌技術の開発に向けて、使用ガス種及びイオン密度の違いによる殺菌効果の違いについて検証を行った。供試菌株には、グラム陽性菌のStaphylococcus aureus、グラム陰性菌のEscherichia coliを用いた。 供試菌株としてS. aureusに対して自己点弧型プラズマ装置を使用し、印加電圧-6kVで窒素ガスを用いると2.5D、そして酸素ガスを用いると3.1Dの殺菌効果が得られた。一方、E. coliを使用した場合、同様の条件で窒素ガスを使用して1.3D、そして酸素ガスを使用して1.5Dの殺菌効果が得られた。 両方の菌について電子顕微鏡による観察を行ったところ、いずれの菌についても印加電圧の上昇とともに、細胞表面の皺が増加し、細胞の表面が削られた状態が確認出来た。なお、E. coliの殺菌効率が悪い理由は、グラム陰性菌特有の細胞壁構造に起因していると考えられる。 次に、複合ガスであるHHOガスを用いて同様に処理を行った結果、S. aureusで3.9D、E.coliで3.7Dの殺菌効果を得ることが出来、単独ガスを用いるよりも大きな殺菌効果を得ることが出来た。また、E.coliの殺菌効果をS. aureusと同等レベルまで引き上げることが出来た。令和元年度の結果から、殺菌効果とイオン密度には密接な関係があると考えられるが、複合ガスのイオン密度は、5.3E13(m^-3)と酸素ガスを使用した場合の7.57E13(m^-3)よりも小さく窒素ガスを用いた場合の5.96E13(m^-3)と同程度であった。それにもかかわらず酸素ガス単独で用いた時よりもより大きな殺菌効果が得られた原因は、発生したプラズマ種が多様であった為ではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、新型コロナウィルス感染症の発生により、実験室への立ち入りが制限されるなど、年度前半は研究の実施に際して大きな制限を受けた。 年度後半からは、ほぼ通常どおりの実験が出来るようになったが、実験に使用する高出力対応型プラズマ処理装置が半年間運転をしていなかった事が原因か、RF出力を上げることが出来ない状況となっており、復旧までに時間を要してしまった。その為、令和元年度と同様に自己点弧方式での実験が中心となった。 結果的に、まとまったデータを得るのが遅くなってしまい、予定していた学会発表や論文発表が出来なかった。現在、遅れを挽回すべく、研究に取り組んでいる。 研究成果の公表については、令和3年度に、順次行って行きたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の影響で、令和2年度の研究は予定どおりには行かなかった所もある。しかし、複合ガスであるHHOガスを用いた処理は、イオン密度が低いにもかかわらず単独ガスを用いるよりも効果的に殺菌が出来る事を確認した。令和3年度については、本来ならば令和2年度に実施予定であった、RF出力を併用した際に、様々な微生物種の殺菌効果がどの程度増強されるのか、また、その処理によってそれぞれの細胞表層がどの様な影響を受け、そして殺菌につながっていくのかという殺菌メカニズムについて明らかにしていきたい。併せて、実際の食品素材を用いて、食品の表面加工を行いつつ、表面に付着している菌の殺菌が出来るかどうか検証を行い、プラズマ処理装置の食品加工兼殺菌装置としての可能性を探っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響で実験室への入室制限が行われていた関係で、高出力型プラズマ処理装置を長期間停止していたことが原因と考えられる不調が発生した。その修理に際し、複数回の点検、調整が必要との報告がメーカーよりあった為、予算執行を抑えながら研究を実施していた。その調整は、年度末を迎えても終了しなかったため、結果的に残額が発生した。 なお、当該装置の点検、調整は、令和3年度に入っても継続中であるが、第1四半期が終了するまでには終えたいと考えている。 また、差額については、上記、プラズマ処理装置の点検、調整に係る補修部品の購入に充てる予定である。
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