研究課題
基盤研究(C)
マウスへのエタノール投与により、前頭前皮質及び海馬において脳由来神経栄養因子(BDNF)受容体であるTrkBと、その下流シグナル伝達経路であるGSK-3b、p70S6Kのリン酸化が増強された。また、エタノールは、マウスにおいてAMPA型グルタミン酸受容体サブユニットであるGluA1のリン酸化を増加し、即時的な抗うつ作用を示した。培養神経細胞においてはエタノールの神経栄養因子様作用は観察されなかったことから、エタノールは直接的ではない機序でTrkBを活性化していることが考えられる。
薬理学
本研究の成果により、エタノールが間接的に脳内で神経栄養因子受容体の作用を増強することが示された。これは、過度の飲酒はうつ病を悪化させるが適度な飲酒はうつ病の発症リスクを低下させるという報告や、過量でない飲酒がアルツハイマー病のリスクを低下させるという報告など酒類の健康増進効果の科学的エビデンスとなる可能性がある。