研究課題
多発性硬化症(MS)は遺伝的要因が大きく寄与する中枢神経系炎症疾患であるが、腸内細菌を始めとする環境因子が発症や重篤化に多大な影響を与えることが明 らかになってきた。本研究では、食餌由来成分による腸内細菌制御を介した治療法確率に向けた基盤の構築を構築する。昨年度までに、餌中の食物繊維量を変えることで腸内環境が変化し、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の感受性が変動することを確認した。無繊維餌を与えたマウスではAkkermansiaの減少や短鎖脂肪酸(SCFA)の減少といったMS患者に近い腸内環境を示すとともに、EAE感受性が高まることを確認した。一方、AkkermansiaやSCFAはEAE感受性には影響しないことを確認した。以上の結果から、食物繊維量により変動するSCFA以外の因子がEAE感受性に影響することを確認した。そこで本年度は、食物繊維量で変動する腸内代謝産物を網羅的に解析した。その結果、無繊維餌投与によりいくつかの代謝産物が腸管および血清中で増加することが明らかになった。さらに、無繊維餌投与で増加した代謝産物XはE抗原特異的T細胞を活性化することでEAEの感受性を高めることが示唆された。以上のように、食事成分のうち、とくに食物繊維は中枢神経系の炎症に大きく影響することが示唆された。食物繊維の影響はSCFAを介したものではなく、本研究で新たに見出した代謝産物Xによるものだと示唆された。一方、食物繊維を含む食事成分にEAE治療効果は見られなかった。
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