研究課題/領域番号 |
19K05908
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
加藤 英介 北海道大学, 農学研究院, 講師 (40466446)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 苦味受容体 / 苦味成分 |
研究実績の概要 |
苦味受容体(Tas2R)は口腔内で苦味成分を感知して情報を脳へと送り、体にとって有害な成分を忌避するために存在すると考えられている。しかし、口腔以外の様々な組織細胞にもTas2Rは発現していることが知られており、気道や消化管内での役割が明らかにされつつある。一方で体内組織細胞におけるTas2Rの発現と機能は不明であったが、各種報告から有害成分への対応以外の機能が示唆されたため、その発現状況と役割について解析している。 今年度は各種体内組織細胞に発現する苦味受容体についてマウス由来の組織を用いてリアルタイムPCR法により解析を行った。その結果、脂肪組織、筋組織、肝臓ではmRNAレベルで複数のTas2Rが発現していることが分かった。またマウスの系統により遺伝子配列に変異が入っており、苦味の受容に違いが有る可能性も示唆された。タンパク質レベルでは確認ができていないが、Tas2Rが体内においても何らかの役割を担っている可能性が見いだされた。また、それらの機能解析モデルとして利用できるか調べるため、一般的な培養細胞株である3T3-L1細胞とC2C12細胞のTas2R発現を解析したところ、マウス組織と同じTas2Rを含む複数のTas2Rの発現が確認された。一方で、Tas2Rのリガンドとしては毒性成分がよく知られているが、食品成分にも苦味を有するものは様々知られている。体内の苦味受容体の機能を調べる上で、毒性成分ではなく食品成分を用いるため、苦味を有する食品成分がどのTas2Rのリガンドとして作用するか調べる必要がある。これについて、現在リガンド解析用の系を構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
各種組織細胞や培養細胞株のTas2R発現解析は予定通り進んだが、Tas2Rのリガンド解析用の系の構築がやや遅れている。これは、マウスの遺伝子を元に系を構築する過程で、マウスの系統により違いが見いだされたため、遺伝子データベースに記載のTas2Rに加えて、変異のあるTas2Rについての検討が必要になったためである。
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今後の研究の推進方策 |
Tas2R遺伝子にマウス系統による変異が見られたため、その変異がリガンド認識に影響するか調べる必要が出てきた。そのための解析系を構築する必要があるが、当初予定していた系を応用することで対応可能であるため、今後構築する。その後、リガンドとして認識する食品成分を用いて、各種組織細胞におけるTas2Rの機能について、過剰発現株やノックアウト株を用いて調べていく予定である。
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