研究課題
玄米の摂取により血糖値低下作用など種々の健康効果が明らかにされており、代表的な成分としてγ-オリザノールやフェルラ酸が報告されている。筆者は種皮や胚芽に含まれる成分を胚乳部に移行させた高圧加工米を開発し、ヒト介入試験において高圧加工米摂取による血糖値の改善効果等を明らかにしてきた。高圧加工米中のγ-オリザノール量は通常米の1.2倍程度であり、活性発現に係わる成分については未同定である。そこで、本研究では高圧加工米中に移行する成分を単離・同定すれば、米に含まれる新規な機能性成分が発見できるものと推察し、二糖類分解酵素の一つであるマルターゼ阻害活性を指標に活性成分を検索した。米糠4kg(平成30年度長野県産コシヒカリ)を室温で3日間、メタノール 20Lに浸漬後、吸引濾過して米糠メタノール抽出液を調製した。これを減圧濃縮後、凍結乾燥して米糠抽出物とした。米糠抽出物を水とトルエン、次いで酢酸エチル、ブタノールの順で液-液分配抽出し、各抽出液を得た。マルターゼ活性はラット小腸アセトンパウダーから調製した粗酵素液を用いて反応させ、生成したグルコースをラボアッセイTMグルコースで定量した。阻害活性が認められた酢酸エチル層とブタノール層を濃縮後、各種カラムクロマトグラフィーで分離し、酢酸エチル層の活性画分からスクロースに2分子のケイ皮酸誘導体がエステル結合した3種の化合物を単離、同定した。ブタノール層からは前述の化合物に加えて、マルトースにフェルラ酸がエステル結合した化合物を新たに単離した。これらの化合物のマルターゼ阻害活性は初めての報告である。高圧加工米中のこれら化合物の含有量を定量した結果、いずれも未処理米よりも含有量が増加しており、血糖値改善効果に寄与していることが示唆された。
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Molecules
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巻: 68 ページ: 152836
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