研究課題
ケミカルストレスが介在するファイトケミカルの作用機構として、茶カテキンの主成分である(-)-epigallocatechin-3-gallate(EGCG)の中性脂肪(TG)分解機構について解析した。コンフルエント状態で継続培養することでTGを蓄積させた分化ヒト肝臓細胞Huh7にEGCGを添加すると濃度および時間依存的なTG分解作用を示した。次いで、EGCGがHuh7において酸化ストレスおよびタンパク質ストレスを誘導することを見出した。また、EGCG処理により、抗酸化酵素(HO-1およびNQO-1)、解毒酵素(SULT1A1、UGT1A1およびCOMT)や分子シャペロン(HSP90α)の顕著なmRNA誘導が起こり、適応応答が起こることを確認した。さらに、EGCG添加後に培地中グルコース濃度の低下、細胞内へのグルコースの取り込み量の増加、さらには細胞内ATPレベルの低下が観察されたことから、EGCGのケミカルストレスに対抗するための防御機構の活性化が細胞内外のエネルギー消費を促している可能性が強く示唆された。さらに興味深いことに、いったん低下した細胞内ATPレベルはその後、コントロールよりオ高いレベルに回復した。これはTGの分解によってATPが新たに供給されたことを示唆した。また、EGGC添加によりAMP依存性キナーゼ(AMPK)の活性化が確認できた。以上から、EGCGによるTG分解作用は、そのケミカルストレスに対する適応応答の結果であることが強く示唆された。これまで緑茶あるいは緑茶カテキンの抗肥満作用やTG分解作用がヒト、実験動物、あるいは培養細胞で報告されてきたが、本研究のようにケミカルストレスの観点からのメカニズムの提唱は初めてである。
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