研究課題
本研究では、低タンパク質食摂取によって増加する肝臓4E-BP1とeIF4Gが、糖・脂質代謝調節因子の翻訳を選択的に調節して肝臓に脂質を蓄積させる機構の解明を目指しており、最終年度は以下の検討を行った。まず、昨年度までに決定したラットeIF4Gに対するshRNA配列をプラスミドからウイルスベクターへ組み換え、これを用いてラットeIF4Gをノックダウンするためのアデノウイルスの産生を試みたが、成功しなかった。したがって、研究期間中に、eIF4Gのノックダウンによって、肝細胞内の中性脂肪量がどのように変化するかの検討をすることはできなかった。次に、低タンパク質食摂取による肝eIF4G量の増加が血中アミノ酸濃度の低下によって起こるか、培養肝細胞を用いて検討した。その結果、アミノ酸欠乏培地で肝細胞を培養すると、細胞内のeIF4G量は減少することがわかった。他の結果も併せて考察すると、低タンパク質食摂取による肝臓eIF4G量の増加は、血中アミノ酸濃度の低下を肝細胞が感知して起こる現象ではないと考えられた。最後に、インスリン受容体基質(IRS)-2欠損ラットを用いた検討を行った。低タンパク質食を摂取したラットの肝臓では、4E-BP1やeIF4Gの他に、インスリン受容体基質(IRS)-2量も増加することが既にわかっていた。そこで、IRS-2欠損ラットに低タンパク質食を与えて各種検討を行った。その結果、IRS-2が欠損すると低タンパク質食摂取による脂肪肝の形成が抑えられること、肝4E-BP1量の増加は起こるが肝eIF4G量の増加は起こらないことを見出した。これらの結果から、低タンパク質栄養状態に応答して増加する肝臓のeIF4Gと4E-BP1は、独立した機構を介して肝中性脂肪量を調節することが示唆された。得られた成果は今後の本研究の発展につながると考えている。
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