研究課題/領域番号 |
19K05920
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
吉田 秀幸 福岡大学, 薬学部, 教授 (20301690)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 下痢性貝毒 / オカダ酸 / 誘導体化分析 / LC-MS / フルオラスケミストリー |
研究実績の概要 |
食用の二枚貝には毒素を含むものがあり,食の安心・安全を担保するためにも,正確かつ迅速な貝毒分析が不可欠である。そこで,我々の特許技術「フルオラス誘導体化法」とLC-MSとを組み合わせ,下痢性貝毒成分であるオカダ酸群を対象とした新規分析法の構築を目指している。(1)前処理を兼ねた簡便な誘導体化操作,(2)高感度化の作用があるフルオラスLC分離,(3)選択性の高いMS/MS検出,の連結により,従来の公定法であるLC-MS/MS法を凌駕した,簡便・高感度・特異的・高精度な分析法の構築に繋がるものと思われる。 研究三年度目は,初年度・二年度目の成果である認証標準物質(ホタテガイ中腸腺)で最適化したオカダ酸及びその類縁物質(ジノフィシストキシン-1及び-2)との同時分析条件を用いて,いくつかの実試料を対象とした実証研究に従事した。数種の貝ホモジネート試料に添加されたオカダ酸とジノフィシストキシン-1及び内標準物質候補であるジノフィシストキシン-2とのLC分離は,ホタテガイ中腸腺の場合と同様,グラジエント溶離によって容易に達成された。また,前処理としては有機溶媒を用いた除タンパク並びに脱脂によって精製され,フルオラス誘導体化が可能な状態となった。つまり,貝毒成分の回収率及び不要成分の除去率は極めて良好で,当初設定された条件が汎用性の高い方法論であることが確認された。 一方,バリデーションデータの取得に関しては,十分な室内再現精度は確認できたが,室間再現精度については検証の途上である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フルオラス誘導体化LC-MS法を下痢性貝毒の分析に適用するため,前年度までのオカダ酸及びその類縁物質に対する前処理・分析条件の最適化に続き,数種の実試料を対象とした実証実験並びにバリデーションデータの取得を行った。実証実験については「研究実績の概要」に記したとおり十分な成果が得られたが,バリデーションについてはコロナ禍のため十分量の室間再現精度に関するデータを取得することができなかった。また,当初参加予定だった学会が開催されなかったり,オンライン開催となったため,旅費として計上していた予算の執行が十分になされなかった。 これらのことを総合的に判断して,順調に進展しているとは言い難く,やや遅れていると判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに十分な量のデータを集められなかった分析法バリデーションのうち,室間再現精度に関する検証を行う。研究室外の研究協力者からの協力を仰ぎ,必要データを集めるだけでなく,方法論の普及に努める予定である。 今後の研究の進捗に応じて,実験動物を用いた貝毒成分の体内動態解析にも挑戦したいと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度同様,コロナ禍の影響で学会出張ができず,開催された学会もオンラインのものばかりで,旅費を一切執行できなかった。オンライン開催の学会には参加を見合わせたものが多く,学会参加費の執行も一部だけに限定された。また,海外から購入予定だった一部のフルオラス試薬の納品が間に合わず,物品費の執行が滞った状態だった。 次年度も対面での学会開催は少ないと予想されるので,学会参加等のための旅費を消耗品費や論文投稿関連費に振り替え,研究活動を遂行する。
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