研究実績の概要 |
ナノマテリアルの産業利用増加に伴い,食品由来の暴露が懸念されている.生体内で溶解しうる金属ナノ粒子は,イオン状態と粒子状態で毒性が異なるため,両者を分けて分析する必要がある.測定イオンの積分時間を10ミリ秒以下に設定した単一粒子-誘導結合プラズマ質量分析法 (sp-ICP-MS) は,二つの形態を分別測定できるため強力な分析方法である.食品由来のナノ粒子の暴露は重要な課題であるにもかかわらず,固体試料からナノ粒子を抽出する方法は確立されていない.sp-ICP-MS法の食品試料への適用性を,魚介試料中の銀ナノ粒子 (Ag NPs)を分析することで検討した.魚肉ソーセージを試験試料として用いて,異なる原理の前処理方法(超音波, 酵素分解, アルカリ処理, 界面活性剤等) を検討した.魚肉ソーセージからのAg NPs の抽出は,水酸化テトラメチルアンモニウム (TMAH) を用いたアルカリ処理とドデシル硫酸ナトリウム (SDS) を用いた可溶化の組合せで達成することが出来た. 粒径60 nmのAg NP標準溶液を試験試料に50 ng Ag L^-1の濃度でスパイクして添加回収試験を行ったところ,開発した前処理法は他の処理法よりも粒径 (97.7±3.8%), 粒子数濃度 (77.1±17.4%),粒子質量濃度 (72.0±24.3%) で良い回収率を示した.さらに,限外ろ過を行うことでイオン状態のAgを取除く工程を追加し食品試料中のAg NPを分析した. 粒径 14~50 nm のAg NPsが牡蠣から検出され,粒子数濃度は3.3×10^5~1.8×10^8 particle/gであった.
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