研究課題/領域番号 |
19K05937
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
坂本 宏司 広島国際大学, 医療栄養学部, 教授 (80613017)
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研究分担者 |
真部 真里子 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (50329968)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | やわらか炊飯米 / α-アミラーゼ / 介護食 / 軟らか穀類加工品 / 酵素含浸 |
研究実績の概要 |
通常の加工品と同等のエネルギーを保有し、かつ、介護食として有用な物性を付与した穀類の加熱炊飯品を製造するための酵素含浸法について検討した。加熱炊飯を前提に、脱穀後または搗精後の外観形状が保持されている穀類加工品において、酵素活性を有した状態の外部由来の分解酵素を含有させる方法について、米を対象に実験を行った。精白米の含水率は約14%に調整されているが、このままの状態では酵素は中心部まで含浸できなかった。精白米の含水率を12%以下に乾燥させると吸水率、吸水速度が急激に上昇し、8.5%まで乾燥するとそれらは2倍以上に上昇することがわかった。また、米の軟化にはα-アミラーゼが適しており、乾燥精白米をα-アミラーゼ水溶液に浸漬し、加熱炊飯すると炊飯米は軟化することがわかった。乾燥は加熱乾燥、低温真空乾燥、いずれも効果的であった。すなわち、事前のでんぷんの糊化(α化)処理は必須ではなかった。α-アミラーゼを含浸させた米を120℃~150℃で炊飯すると、軟化に伴い米粒が損傷する現象が認められた。また、通常の炊飯米に比べ、甘味が失われていた。これは、米粒の損傷は炊飯過程における水の対流によるものと推察された。また、甘味の減少は、加熱乾燥工程における酵素の不活性化により、還元糖の生成が抑制されたものと推察された。米粒の損傷防止方法として、低温加熱による水の対流抑制が考えられた。また、α-アミラーゼの作用による還元糖の生成を促進する方法として、酵素活性領域での通過時間を延長させるための、低温加熱の導入が考えられた。実際に、沸騰前に60℃~95℃帯の加温時間を延長させることで、米粒の損傷の抑制、還元糖の増加による甘味の付与を行うことができた。今後は、最も食味の良い軟らか炊飯米を作製するための、酵素濃度、炊飯条件、加水量、浸漬時間について検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画では、酵素含浸メカニズムの解明、米の乾燥による水分除去量と酵素含浸効果を実施する計画であった。研究成果は、軟らか炊飯米を作製するための基礎的な処理方法と軟化データが得られており、このデータをベースに今後発展させることができる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画どおりに遂行する。酵素活性を測定し、酵素濃度、炊飯条件、加水量、浸漬時間について検討するとともに、酵素塗布方法を確立し、介護食として実用化可能な技術に仕上げていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染の影響により、一部研究計画を修正した。
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