研究実績の概要 |
本研究では、腐敗食品の指標となる細菌種の選抜を目的としている。これまでの研究で、腐敗した食肉で共通して見出される細菌(Yersinia属、Pseudomonas属)を特定した。しかし、食肉以外の食品ではメタゲノム解析を行っていないため、見出された細菌属が食肉に特異的であるか判断できなかった。そこで、本年度は、洋菓子を対象にメタゲノム解析を行い、腐敗指標となる細菌属の特定を試みた。 4種類の市販洋菓子(A, B, C, D)を37℃にて24時間保温し、腐敗させた。腐敗洋菓子を10 g採取し、90 mLの滅菌済み生理食塩水と混合し、30秒間ストマッカーで処理して均質化した。この溶液からDNAを抽出して、次世代シーケンサー(NGS)を用いた16S rDNA解析の試料とした。 NGS解析で得られたリード数は、洋菓子A(26,370リード)、洋菓子B(25,674リード)、洋菓子C(29,446リード)、洋菓子D(19,683リード)であった。各々の腐敗洋菓子の細菌フローラ(占有率3 %以上)は以下のとおりであった。洋菓子AはBacillus属(46 %)、Pantoea属(40 %)、Leuconostoc属(6 %)、Staphylococcus属(5 %)。洋菓子BはBacillus属(87 %)、Pantoea属(13 %)。洋菓子CはBacillus属(81 %)、Leuconostoc属(9 %)、Gluconobacter属(4 %)、Pantoea属(3 %)。洋菓子DはPantoea属(95 %)。すべての洋菓子でPantoea属が検出され、腐敗指標となり得ると考えられた。腐敗食肉で共通して検出されたYersinia属は、洋菓子Aにおいて1リード検出されただけであり、Pseudomonas属は洋菓子Dで116リード、洋菓子Cで1リード検出されたにすぎなかった。
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