本研究は、ヒトの生体機能を模倣してデザインしたOrgan-on-a-chip(以下、チップ)を用いて生体反応をモデル化し、食品の毒性・安全性の評価系を構築することを目的とするものである。これにより、食品由来の毒物やアレルゲン等に加え、生産過程で添加物として使用する新しい化学物質の承認申請時に企業等が行う動物実験による安全性確認のデータの補完的役割として、ヒトのチップによるデータの利用可能性を判断し、科学的根拠に基づく食品安全行政に資する評価法の構築を目指す。また、構築した評価手法により取得したデータについては、臨床データと比較し、教師データとなり得るかを判断した上でデータベース化を行い、評価手法の普及促進を行うことを目的とする。
2022年度は、国内で確保したチップのモックアップ作成拠点を活用し、食品の毒性・安全性評価用のチップ(腸、肝)を複数デザインし作成した。これらを用いてヒトの生体内で食品や食品中の添加物、栄養補助食品等がどのように吸収され代謝されるか、特定の臓器にどのような影響を及ぼしうるかについて、どのようなデザイン及び手法を用いることで簡易かつ正確に必要な項目が評価できるか等の検討を進めた。
本研究では、これまで医薬品の薬理評価試験に用いてきたオリジナルのチップを食品レベルの評価に対応し得るようデザイン変更することにより、新たな食品の毒性・安全性評価手法の構築を目指した。なお、本研究活動期間において収集したチップに係る情報(素材、活用方法、課題等)については、「薬物の毒性・代謝等の評価に資するデバイスの機能と素材について」としてとりまとめ、2021年度の化学とマイクロ・ナノシステム学会第43回研究会で発表している。
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