研究課題/領域番号 |
19K05950
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 洋 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50212329)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オルガネラ / 初期発生 / mVam8 / CORVET複合体 / 原腸陥入 |
研究実績の概要 |
原腸陥入期前後の哺乳類初期胚は、母体からシグナルと栄養を受け取り、胚の組織構築と成長をおこなう。マウス初期胚の場合、母体からの高分子物質の受容には臓側内胚葉とよばれる単層上皮における活発なエンドサイトーシスが中心的な機能をもつ。エンドソームとリソソームの相互作用を担うCORVET分子複合体のサブユニットを欠損するマウス初期胚は、臓側内胚葉におけるエンドサイトーシスが不全となり、原腸陥入以前の発生段階で致死となる。このマウス初期胚の表現型はmTORシグナル、Fgfシグナルなどに異常を示すことを示唆する。これまでの研究から、Fgf経路、Tgf経路,Bmp経路などには顕著な異常を見いだせていない。そこで、mTORシグナルのパターンを、胚盤胞から卵筒胚形成にいたる過程の表現型を詳細に検討した結果、mTORシグナルの低下が観察された。さらに胚盤胞の形成には、CORVETサブユニット遺伝子欠損胚でも一見正常に進行しているように観察された。しかし、卵母細胞で遺伝子機能を喪失させた欠損胚では、胚盤胞の時期にもわずかな形態の異常、シグナル分子のパターンの変化が観察される。母性由来遺伝子産物の欠失は、野生型精子との受精で相補されることから、受精から胚盤胞までの時期にはCORVET遺伝子機能は必須ではなく、胚盤胞から卵筒胚へのパターン構築にクリティカルなステージがあると考えられる。今後、この時期に機能をもつ制御因子と、エンドサイトーシス機能との関連を明らかにすることが、遺伝子欠損がもたらす表現型を理解するのに重要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胚盤胞から卵筒胚にいたる発生段階は、初期発生の「ブラックボックス」とも言われていて実験的に介入するのがむつかしいところであること、さらには、これまでにわかっている知見に乏しいこと、の理由により、やや手探り状態で研究を進めざるをえないことが多々あり、研究がやや遅れ気味になっている。しかし、エンドサイトーシスに依存する制御機構の候補をいくつかに絞ることができており、今後、中心的に観察を進めることで進展できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
・候補とするシグナルのパターンを、遺伝子欠損胚と野生型胚で比較検討する。候補のシグナルはこれまで初期発生で検討されてはいなかったものであり、抗体の選定、反応条件の検討、また、in situ probeの検討などが必要とされるが、これまでの経験を活かして対応する。 ・現在、CORVET複合体mVam8サブユニットの遺伝子欠損に関して詳細に解析を進めているが、近年作成している他のサブユニット遺伝子欠損胚の表現型も、同時に明らかにしていく。これにより、エンドサイトーシス機能不全の全般的な効果と、特定サブユニットに特異的な細胞機能とを遺伝学的に区別することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの購入費(物品費)が予定より少額で済ませることが可能であった。しかし、マウス飼育管理費(その他)が消費税の影響や人件費の増加などの影響で、当初予算よりも増額してしまった。全体的には研究費に余裕が生じた。次年度以降、マウスの使用量が増えると予想されるため、それに充当することで研究を効率的に進めていく。
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