研究課題/領域番号 |
19K05952
|
研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
水谷 治 琉球大学, 農学部, 准教授 (10443996)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 麹菌 / ゲノム編集 / 人工ヌクレアーゼ (TALENs) / CRISPR/Cas9 / DNA 二本鎖切断修復 / ligD |
研究実績の概要 |
黄麹菌において TALENs や CRISPR/Cas9 といったゲノム編集ツールを用いて非相同末端結合 (Nonhomologous end-joining: NHEJ) の修復エラーを利用したゲノム編集を行うと、得られた株の半分程度で 1 kb 以上の大規模な欠失が引き起こされることを見出し、このメカニズムの解明に取り組んでいる。現在までの成果として、NHEJ 経路の最終反応に寄与する ligase をコードする遺伝子 ligD が大規模欠失に関与すること、大規模欠失が抑制される変異株の取得が挙げられる。本研究では、大規模欠失抑制変異株のゲノム解析より、大規模欠失メカニズムの解明に取り組むと共に、一般的に酵母や高等生物で観察されているゲノム編集時の数 bp の欠失は、黄麹菌では、どのような DNA 修復機構によってもたらされているのかを明らかにすることを目的としている。本年度は、ligD 遺伝子の役割を明確にするために、ligD 遺伝子過剰発現株を用いて、2 本鎖切断の修復エラーを介したゲノム編集を行ったが、ゲノム編集候補株自体が全く取れなかった。そこで、ligD 遺伝子過剰発現株の解析を行った所、何度か植継と ligD 遺伝子過剰発現カセットが脱落してしまうことを示唆するデータが得られた。そのため今後は、プロモーターの検討や ligD 過剰発現株造成後、直ちにゲノム編集を試みる等の検討が必要であることが考えられた。一方、黄麹菌大規模欠失抑制株のゲノム解析を次世代シークエンサーによって行った。現在、新規アセンブリ等の解析を行っており、今後、変異箇所の同定を行っていく。また、黒麹菌においても黄麹菌と同様にゲノム編集を行うと大規模欠失が観察されるかを調べるために、その準備として Cas9 直接導入を目指したプロトプラスト化やエレクトロポレーション法の検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
黄麹菌 ligD 遺伝子過剰発現株が安定せず、ligD 遺伝子過剰発現カセットが脱落してしまい、再度、株の取り直しをする必要が生じてしまった。今後は、ligD 遺伝子の過剰発現が黄麹菌にとって負荷をかけている可能性を考慮しつつ実験を進めていく。一方、大規模欠失抑制変異株のゲノム解析は予定通り行えたので、今後、解析を進めていく。黒麹菌に関しては、市販の細胞壁溶解酵素 Yatalase に加えて高濃度のα-1,3-グルカナーゼを組み合わせれば、黒麹菌においてもプロトプラスト化が十分可能であることが明らかとなった。また、本学の改修工事により実験室が避難地に移動となり、引越作業及びセットアップに多くの時間を取られたこともあり、やや遅れているとした。
|
今後の研究の推進方策 |
黄麹菌において、ゲノム編集時に引き起こされる大規模欠失の原因遺伝子と予想される ligD 遺伝子の過剰発現が難しい可能性を考慮しつつ、再度 ligD 過剰発現株の造成を試みる。特に。現在使用しているプロモーターからの変更やネイティブのプロモーターを検討していく。大規模欠失抑制変異株のゲノム解析に関しては、引き続き、新規アセンブリの解析を行いショートリードのみの結果で変異箇所が特定できるかを検討する。データ量が足りない場合は、ナノポアシーケンサーを用いた長鎖シーケンスの導入を行い、精度の高い配列情報の組立を行う。加えて、黒麹菌では、プロトプラスト・PEG 法やエレクトロポレーション法による Cas9 とガイド RNA の直接導入によるゲノム編集を検討し、黄麹菌と同様に大規模欠失が引き起こされるかを観察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本学の改修工事により実験室が避難地に移動となり、ゲノム編集株群などの菌株保存用超低温フリーザー(70万円程度)の購入を見送らなければならなかったため、その金額が次年度分の繰越となってしまった。改修後、新しい研究室への引越しが終わり次第、購入することとする。
|