研究課題/領域番号 |
19K05954
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
石橋 宰 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (70293214)
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研究分担者 |
目良 恒 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任講師 (70650381)
乾 隆 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 教授 (80352912)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / G蛋白質共役型受容体 / レンチウィルスベクター / ノックアウトマウス / 骨髄細胞 / CRISPR/Cas9 / RANKL |
研究実績の概要 |
申請者らは、リガンド未同定のG蛋白質受容体共役型受容体(GPCR)であるGPR137Bの発現が破骨細胞の分化に伴い顕著に亢進することを見出した。さらに、本遺伝子が欠損した破骨前駆細胞を用いて、GPR137Bが破骨細胞分化に決定的な役割を担うことを明らかにした。一方、Ursoら(Bone 127, 104-113, 2019)は、Gpr137b遺伝子の欠損により, マウス骨髄細胞の破骨細胞分化能, およびゼブラフィッシュにおける骨吸収活性が亢進することを報告している。この際、リガンド非依存的なGPR137Bの恒常活性が破骨細胞分化に関わることが示唆された。そこで本研究は、破骨細胞分化におけるGPR137Bを介したシグナル伝達の詳細について解析することを目的とする。 本年度は、前年度に引き続き①GPR137Bを過剰発現するRAW264細胞株の作出と破骨細胞分化能の評価、および、②Gpr137b遺伝子欠損マウスの骨髄細胞を用いた破骨細胞分化能評価を行った。その結果、①では、Gpr137b過剰発現レンチウィルスベクターを用いて、Gpr137b過剰発現細胞クローンとコントロール細胞クローンをそれぞれ合計5株ずつ取得することに成功した。そこで、これらの細胞クローンのRANKL依存性破骨細胞分化能について、酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)染色や、各種破骨細胞マーカー遺伝子(カテプシンK、TRAP等)の発現解析により評価した。また、②では、筑波大学トランスボーダー医学研究センターとの共同研究にて作製したGpr137b遺伝子欠損マウスから定法に従い骨髄細胞を分離後、破骨細胞分化誘導因子であるReceptor activator of nuclear factor-kappa B ligand (RANKL)存在下で培養し、破骨細胞分化能を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①GPR137B過剰発現RAW264細胞株の作出と破骨細胞分化能の評価 Gpr137b発現レンチウイルスベクターをRAW264細胞に感染させることにより得られたGPR137B過剰発現(OE)株、およびコントロール(CN)株のそれぞれ5株を解析に供した。OE株ではCN株と比較してGPR137B蛋白質およびmRNAの顕著な高発現が認められた。次に、各細胞株に対し、RANKLによる破骨細胞分化誘導を行った。破骨細胞マーカーである酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)を利用したTRAP 染色を行い、核数が3-5、6-10、および11以上の破骨細胞数をそれぞれ計測したところ、OE株ではCN株と比較して破骨細胞数が少ない傾向が認められた。また、破骨細胞マーカー遺伝子の発現量解析の結果、OE株ではCN株と比較してこれらの発現が有意に低かった。以上より、GPR137Bの過剰発現は破骨細胞分化を抑制ことが示唆された。 ②Gpr137b遺伝子欠損マウスの骨髄細胞を用いた破骨細胞分化能評価 Gpr137b遺伝子欠損および野生型の8週齢同腹雄マウスの大腿骨および脛骨から骨髄細胞を採取し、RANKL存在下で3-4日間培養することにより破骨細胞分化を誘導した。これらの細胞からRNAを抽出し、qRT-PCR法により複数の破骨細胞マーカー遺伝子の発現を解析した結果、いずれもGpr137b遺伝子欠損マウスにおいて発現が低下する傾向が認められた。 以上のように、Gpr137b遺伝子を過剰発現させたRAW264細胞、および同遺伝子欠損骨髄細胞を用いた破骨細胞分化誘導実験において、どちらも破骨細胞分化能が低下する結果となった。先行研究の結果も考慮し、前者では破骨細胞分化能が亢進することを予想していたが、予想に反する結果となった理由として、過剰発現により破骨細胞分化抑制をもたらす別のメカニズムが働いたとことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
Gpr137b過剰発現RAW264細胞では、過剰発現に伴う非生理的なシグナリングが惹起されることにより、本来のGpr137bの機能を追求できない可能性があるため、過剰発現の方法などについて再検討の余地がある。そこで、本課題研究において、今後はGpr137b遺伝子欠損マウスを用いた解析に集中する予定である。 これまでの結果では、Gpr137b遺伝子の欠損により骨髄細胞の破骨細胞分化能がやや低下したものの、その程度は小さく、マウス個体数を増やして解析を続ける必要がある。また、脱灰長管骨のパラフィン包埋組織切片の観察においては破骨細胞数や骨形態の明らかな変化は認められなかった。そこで、現在、非脱灰骨組織を用いた詳細な骨形態の計測、骨強度の測定、および血清中や尿中の骨吸収マーカーの定量解析等を行う予定である。また、加齢に伴い、Gpr137b遺伝子欠損の体重が野生型に比して低くなる傾向が認められており、骨組織に影響が現れる可能性もある。そこで、高齢のマウスを用いた解析も進行中である。。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大防止措置の影響により研究に必要な物品の一部が品薄となり、一部の実験が当初の計画より遅れた。そこで、前年度に引き続き期間延長を申請し、2023年度までの延長が認可されたため、当該実験に係る費用を繰り越すに至った。
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