研究課題/領域番号 |
19K05968
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
服部 束穂 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (10164865)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 胚乳 / イネ / アリューロン層 / デンプン性胚乳 / 非対称分裂 / 運命特定 |
研究実績の概要 |
本研究は、イネ胚乳の内部を占めるデンプン性胚乳細胞(SE)と最外層に位置するアリューロン細胞(SE)という2種類の構成細胞が初期胚乳細胞より分化するメカニズムを中心に、イネの胚乳発生の分子機構を明らかにすることを目的とする。胚乳の発生は受精中央が細胞質分裂を伴わない核分裂により数千の核が細胞内周に1層に配置された多核細胞を形成した後、細胞化し、並層分裂により内側へと細胞を増やしていく。この際、最外層における並層分裂では、内側に配置された細胞は、常にSEへの分化運命を辿るのに対し、外側細胞は、再び並層分裂により内側へSE運命を辿る細胞を作り出すとともに最終的にAL細胞に分化する。原理的には、最初の並層分裂は非対称分裂であるが、その実態は未知であった。 そこで本年度は、最初の並層分裂により生じる内側細胞と外側細胞にトランスクリプトームの差異が検出されるか否かをLMD-RNA-seqによって調べた。その結果、2細胞層の段階で内側・外側に明瞭なトランスクリプトームの差異があり、かつその際はSEおよびALの特徴の暗示するものであった。これらの結果は、細胞化の段階の最初の並層分裂が明らかな非対称分裂であり、SE/AL運命特定のコミットメントがすでに起きていることを強く示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多核胚乳から最初の並層分裂で生じる並層分裂において生じる内外娘細胞に明確なトランスクリプトーム差違が検出され、差違はその後の細胞運命を反映するものであることがわかったこと、すなわち、SE/AL運命特定のコミットメントがすでに起きていることが明らかとなったことは、期待以上の画期的成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、細胞化直前の多核期を含めたさらに詳細なステージングや空間的解剖に基づくトランスクリプトーム解析を同様な方法で進め、胚乳特異的遺伝子の発現は多核期から1細胞層期への移行した段階で既に開始しているのかい否かや、2細胞層になったどの段階でトランスクリプトーム差違が生まれるのかなどの問いに答える実験をすすめ、胚乳最外層における非対称分裂のメカニズムに迫りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度計画を推進する過程で初期の実験において期待以上の成果が得られた。その結果、2019年度に計画していた実験(LMD-RNAseq)の一部は、翌年度に行う予定の実験と統合した実験にした方がより質の高い情報が得られると判断した。次年度使用額を投入して、2020年度にはより精度の高いLMDと詳細なステージングの実験を大規模に行う予定である。
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