研究課題
アブラナ科野菜の穂発芽原因遺伝子の解明に向けて、申請者は、シロイヌナズナで胚成長停止に関わるIAA30経路と種子休眠のABA感受性に関わるABI3経路の二重変異が穂発芽を生じることを明らかにしている。そこで、「穂発芽性を示すアブラナ科野菜もIAA30とABI3経路の2つの独立した経路に遺伝的欠損がある」という独自の仮説に基づき、分子生物学的手法と遺伝学的手法を駆使したアブラナ科野菜における穂発芽の原因解明を研究目的としている。今年度は、昨年度に引き続き、ABI3経路の穂発芽原因遺伝子の同定を試みた。優性の穂発芽性MMA8系統と非穂発芽性MMB7系統の交配により得られた穂発芽したF2種子の集団を用いて第9染色体のQTL領域を特定する試みを行った。しかしながら穂発芽したF2のほとんどが第9染色体の30 Mbp領域中で穂発芽系統ホモ型あるいはヘテロ型で構成されていて非穂発芽系統ホモ型が現れる組換え体がほとんど得られなかった。したがって第9染色体に胚の低休眠性をもたらす複数のQTLが座乗していることが示唆された。一方で、遺伝分析の結果より、キャベツおよびハクサイの穂発芽は母性効果で生じることが見出された。そこで、母性効果で穂発芽を生じさせる原因遺伝子の同定を試みた。ハクサイの世代促進栽培系を確立して、ハクサイの穂発芽系統と非穂発芽系統のF2を作出して、これらに、両系統に和合性の系統を花粉親として交配して得られたF3の表現型解析より母性効果で穂発芽させる原因遺伝子をホモで持つF2個体を選抜した。選抜された個体群と両親より精製したゲノムDNAを用いてGRAS-Di解析を行った結果、穂発芽系統ホモ型が濃縮される領域を複数見出した。したがって、IAA30経路とともに作用する穂発芽原因遺伝子は主に母性効果で機能して複数のQTLに支配されていることが示唆された。
すべて 2021
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Plant biotechnology
巻: 38 ページ: 77 87
10.5511/plantbiotechnology.20.1207a