オオムギの穂先の突起である芒は、イネ科固有の器官で、葉が変形してできたと考えられる。芒は鳥獣害を防ぐ他、オオムギでは発達して葉緑素を蓄積し、光合成を行い、収量に貢献する有用な器官である。しかし、芒の組織学的な起源やその発生分子メカニズムには不明な点が多い。本研究では、オオムギにおいて、芒が葉に先祖返りした突然変異体である葉状外穎変異体(leafy lemma)の原因遺伝子を分子遺伝学的に特定し、その機能を解明し、葉が芒に転換する機構を解明することを目的とする。 オオムギのleafy lemma突然変異体は3つの遺伝子が揃って葉状化する表現型が現れることを、初年度の交雑実験により解明した。そのうち1つは4H染色体長腕に座乗する短芒遺伝子lks5であり、イネのOsMADS1 /LHS(leafy hull)遺伝子のオーソログであることを解明した。また、残りの2遺伝子は4H染色体長腕のlks5よりもさらに端部に位置すること、また、3遺伝子目は2H染色体長腕に位置することを遺伝マッピングによりこれまでに明らかにした。 最終年度は、4HL端部ならびに2HL長腕に位置する芒の葉状化に関わる遺伝子の絞り込みをさらに集団規模を拡大し、遺伝マッピングによりおこなった。 オオムギleafy lemmaは3因子が関与するが、1番目の因子であるlks5ホモの遺伝的背景で、2遺伝子が分離する約3千個体からなる分離集団を展開した。葉化した芒の表現型を示すのは独立に分離する2遺伝子の劣性ホモは(1/4)x(1/4)=1/16の確率で発現する。二重劣性ホモが187個体出現した。これらの個体より個別にDNAを抽出し、PCRマーカーで両遺伝子を個別にマッピングした。さらに、4HL端部-lel因子と2HL-lel因子とがそれぞれ1遺伝子分離する遺伝実験集団で詳細なマッピングを行い、2HL-lel因子については、有力な候補遺伝子が見つかった。
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