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2019 年度 実施状況報告書

イチゴ属の環境応答と生長を制御する植物ホルモン受容体のゲノム編集による機能解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K05972
研究機関徳島大学

研究代表者

刑部 祐里子  徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (50444071)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードイチゴ / ストリゴラクトン / ゲノム編集 / 環境応答 / 栄養繁殖
研究実績の概要

イチゴは匍匐枝(ランナー)による栄養繁殖性を示し、特殊な環境適応様式を持つと推測される。モデル品種二倍体イチゴであるFragaria vescaは、全ゲノムが解読されたが、環境応答や生長分化については分子レベルでの解明は、モデル植物と比較して進んでいなかった。我々はバラ科のモデルあるいは栄養繁殖性のモデルとして、F. vescaを用いて、その環境適応の分子制御機構を明らかにすることを目的とし、植物の枝分かれや環境応答に重要なストリゴラクトン(SL)受容体DWARF14 (D14)をゲノム編集にて変異を導入して、その表現型を解析した。FvD14のゲノム上の2箇所を標的としてgRNA(gRNA1およびgRNA2)を設計し、当研究室でこれまで構築した高効率CRISPR/Cas9ベクターにそれぞれの標的配列を導入しF. vescaに形質転換した。その結果、形質転換当代において体細胞レベルでバイアレリック変異を示す系統がgRNA1およびgRNA2のどちらの配列を用いた場合においても高い効率で得られることが明らかになった。変異配列の詳細を解析した結果、fvd14ノックアウト (bi-allelicあるいはhomo変異体)が複数系統得られたことが明らかになった。fvd14変異体は野生型に比べロゼット葉、ランナーおよび花数が増加しており、またランナーの維管束発達が遅延していた。さらに、fvd14変異体は野生型に比べ気孔開口の程度が高くなっており環境因子に対する応答性が異なることが示唆されたが、アブシジン酸(ABA)による気孔閉口は野生型と同程度の応答性を示した。今後、イチゴにおけるSLの生長分化と環境応答の機能について詳細解明を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までのところ、当初の研究計画通りにイチゴゲノム編集の構築およびストリゴラクトン受容体d14ノックアウト変異体作製が完了した。構築した変異体系統を用いて栄養繁殖および環境応答に関わる表現型解析に着手し、イチゴ においてD14が欠損することにより、枝分かれにおける形態に著しい影響が見出されることが明らかとなった。
以上より、本研究は、当初の計画通りに順調に実験を進められている。

今後の研究の推進方策

イチゴにおいてストリゴラクトン受容体が欠損することにより、F. vescaの栄養繁殖に関わる表現型が大きく変化することが明らかになった。今後は乾燥ストレスなどへの応答に関わる表現型や遺伝子発現に対する影響を詳細解析し、ストリゴラクトンが制御するイチゴの環境応答の分子機構を解明する予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初、2020年4月初旬に開催予定であった国際会議Keystone Symposia "Plant Genome Engineering"(米国コロラド州)に参加するため、2019年の予算にて参加費や旅費を利用していたが、新型コロナの拡大のため、会議が中止となり、2020年度に物品費での使用予定に変更した。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Direct conversion of carlactonoic acid to orobanchol by cytochrome P450 CYP722C in strigolactone biosynthesis.2019

    • 著者名/発表者名
      Wakabayashi, T., Hamana, M., Mori, A., Akiyama, R., Ueno, K., Osakabe, K., Osakabe, Y., Suzuki, H., Takikawa, H., Mizutani, M., Sugimoto, Y.
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 5 ページ: -

    • DOI

      doi: 10.1126/sciadv.aax9067

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] CRISPR/Cas9によるFragaria vescaストリゴラクトン受容体D14ノックアウト体の表現型解析2020

    • 著者名/発表者名
      宮地朋子、田上翔也、坂口航平、島田佳南里、中嶋英子、藤井秀輝、篠原啓子、原田陽子、刑部敬史、刑部祐里子
    • 学会等名
      第61回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] 植物のエネルギー代謝制御による環境耐性の獲得2019

    • 著者名/発表者名
      刑部祐里子
    • 学会等名
      植物環境応答ワークショップー生物の環境応答のメカニズム解明を目指して
    • 招待講演
  • [学会発表] 植物の機能を生かすゲノム編集技術研究2019

    • 著者名/発表者名
      刑部祐里子
    • 学会等名
      第2回明治大学科学技術研究所公開講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] Genome editing of the model strawberry “Fragaria vesca”using plant-optimized CRISPR/Cas9 system2019

    • 著者名/発表者名
      Tomoko Miyaij, Shoya Tagami, Kohei Sakaguchi, Kanari Shimada, Eiko Nakashima, Syuki Fujii, Keiko Shinohara, Yoko Harada, Keishi Osakabe, Yuriko Osakabe
    • 学会等名
      Frontiers in Genome Engineering 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] CRISPR/Cas9を用いて作製したストリゴラクトン受容体D14変異体の形態および乾燥応答能に及ぼす影響の解析2019

    • 著者名/発表者名
      宮地朋子,田上翔也,坂口航平,島田佳南里,中嶋英子,藤井秀輝,篠原啓子,原田陽子,刑部敬史,刑部祐里子
    • 学会等名
      第37回日本植物細胞分子生物学会大会
  • [図書] 完全版ゲノム編集実験スタンダード (実験医学別冊)2019

    • 著者名/発表者名
      刑部祐里子、原千尋、橋本諒典、宮地朋子、刑部敬史
    • 総ページ数
      14
    • 出版者
      羊土社

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公開日: 2021-01-27  

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