本研究課題は、イネの胚乳における多様なエピジェネティック制御の理解へ向けて、6つのDNA脱メチル化酵素の特異性がどの様に決められているのか、その分子機構を明らかにしていくことを目指している。そのためのアプローチとして、DNA脱メチル化酵素のゲノム環境を含めた基質特異性や新規基質、相互作用因子に着目し、①基質および周辺ゲノム環境の特異性の精査、②5-メチルシトシン(5mC)以外の新規基質塩基の探索、③DNA脱メチル化酵素と相互作用する因子の検出、これら3つを中心とした解析を計画し実施している。 ①についてはこれまでに、トランスポゾンアレイを用いた、胚乳発生過程での経時的なトランスポゾンの発現変動解析、5mCの分布に着目したメチローム解析、およびRNAseqによるゲノムワイドな発現解析を行い、それぞれの変異体について発現変動の見られるトランスポゾンの抽出、5mCの分布、遺伝子の発現に着目した情報を蓄積してきた。解析の解像度を更に高めることを試みるとともに、得られた情報を用いて、ゲノム環境を含めた基質選択性の比較解析を行った。②については、前年度に引き続き、塩基修飾を検出できるPacBioによるゲノムシーケンスを用いて、新規基質候補としての6mAの検出を試みた。③については、DNA脱メチル化酵素と相互作用する因子を検出していくための免疫沈降(IP)解析に利用する、tagを付加したDNA脱メチル化酵素の構造を持つ遺伝子をイネに導入した。DNA脱メチル化酵素が大きなタンパクであることやクローニングの際にバクテリアの生育を妨げることから作出は困難であったが、導入した遺伝子を持つ植物体を作出し、目的タンパクの発現を確認した。これらの植物体を用いて、付加したtagを利用したIPによる相互因子探索に向けた、生化学的解析の各種条件検討を行った。
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