研究課題
本研究では、オオムギの穂の形成の起源となるシュート頂メリステムに着目し、シュート頂メリステムの形態変化や活性を細胞レベルで解析する技術基盤の確立とその実体解明を目的としている。最終年度は、成長相転換後の花序メリステムとそこから形成される側生器官原基の形態特性の解明を行なった。オオムギ茎頂部の1細胞解像度3Dイメージングおよび樹脂切片による形態解析の結果、花序メリステムは茎頂部の発生が進行するにつれ、サイズが縮小し、これは花序メリステムでの細胞分裂活性および細胞伸長の抑制により引き起こされることがわかった。また、花序メリステムのサイズが縮小するとともに、細胞内部では液胞化が進行し、その後、花序メリステムの内部で細胞死が起こり、それが花序メリステム全体へ波及し、最終的に消失することがわかった。この花序メリステムの液胞化から細胞死に至る過程において、最外層の表皮細胞で液胞化する際、核が組織の内側に極性をもって配置すること、細胞死のタイミングが内側の細胞に比べて遅いことといった興味深い現象を見出した。さらに、花序メリステム直下の小穂原基で起こる発生停止も花序メリステムと同様に組織の内部から細胞の液胞化とそれに続く細胞死により進行することがわかった。以上の結果から、オオムギの穂の形成過程において、花序メリステムの活性が消失する過程を形態的な特性の変化から細分化することができた。オオムギの場合、花序メリステムから形成される側生器官原基の数は一穂粒数に大きく影響するため、今後、本研究で見出した花序メリステムの活性消失と細胞死過程を制御する因子や環境要因を探索することで、収量性の増加に向けた育種への展開が期待できる。
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PLANT MORPHOLOGY
巻: 33 ページ: 25~30
10.5685/plmorphol.33.25