研究課題/領域番号 |
19K05979
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
山岸 博 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (10210345)
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研究分担者 |
寺地 徹 京都産業大学, 生命科学部, 教授 (90202192)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Brassica属 / 複2倍体種 / ミトコンドリアゲノム / Uの三角形 |
研究実績の概要 |
世界的に広く栽培されているBrassica属作物には、3種の2倍体種(B. rapa、B. nigra、B. oleracea)と、それらの種間交雑で生じた3種の複2倍体種(B. juncea、B. napus、B. carinata)が含まれていることが、Uによって解明された。これら6種作物種の関係は「Uの三角形」として確立している。近年の葉緑体ゲノム、ミトコンドリアゲノムの解析によって、複2倍体種のうちB. junceaはB. rapaを種子親として、またB. carinataはB. nigraを種子親として、それぞれ成立したことが明らかになった。その一方で、B. napusの種子親については、現在まで明確になっていない。 我々はB. rapaのミトコンドリアゲノムの全塩基配列を決定し、同種のミトコンドリアゲノムは2タイプ以上に分化していることを見出した。このことから、B. rapaは世界的に2回以上独立に栽培化されたと推定した。さらにこれを基に、B. rapaとB. junceaのミトコンドリアゲノムを比較したところ、B. junceaの成立に、これら2タイプのB. rapaのいずれもが関与していることが明らかになった。同様に、B. nigraのミトコンドリアゲノムにも2タイプが見出され、このうち1つのタイプがB. carinataの種子親となていることが発見された。これらの研究実績を背景として、今年度は主にB. rapaとB. napusのミトコンドリアゲノムを比較した。 今年度は、多数のB. rapaの作物を導入して、実験に供した。その結果、B. rapaの多くの品種・系統は、これまでに明らかにした2タイプのミトコンドリアゲノムのうちどちらか一方を有することが明らかになり、そのうち1つのタイプがB. rapaにおける主要なミトコンドリアゲノムであることが観察された。このようなB. rapaの知見を基礎として、B. napusにおけるミトコンドリアゲノムの解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既述のようにB. napusは、B. rapaとB. oleraceaの種間交雑によって成立したが、どちらを種子親として成立したかは明らかになっていない。そこで、B. napusの6品種・系統を用いて、ミトコンドリアゲノムの塩基配列を両親種と比較した。その結果、解析したB. napusの品種・系統は、B. rapaと同様のミトコンドリアゲノムを持ち、B. oleraceaではなく、B. rapaを種子親とすることが明らかになった。さらに詳しい調査の結果、B. rapaに存在する2つのミトコンドリアタイプに対応するミトコンドリアゲノムを持つ品種・系統が見出された。その一方で、B. rapaにはない特有のタイプを持つ品種が1品種存在した。 このように、現在までに、B. napusの数品種を用いて、それらの成立に種子親として関与したB. rapaの解明を進めた。その結果、B. napusにおける種内変異が見出されたため、さらに多数の品種・系統を用いて解析を続ける必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
B. napusの供試材料をふやして、この種におけるミトコンドリアゲノムの分化を詳細に明らかにする。また、B. napusの成立に関与した2種のうち、B. oleraceaについて、既往の研究成果に加えて新たにミトコンドリアゲノムの分化を詳しく調査する。それによって、B. napusの種子親となったB. oleraceaが存在するかどうか、存在するとしたら、どのタイプのB. oleraceaであったかを明確にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
B. napusとB. oleraceaの植物材料の収集および育成に時間を要した。このため両種植物の多数の品種・系統からDNAを単離して解析するまでに至らなかった。現在生育中の植物体を用いて、令和2年度にミトコンドリアゲノムの解析を進めるために使用する。
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