近年のゲノム解析技術の発達により、イネの収量性を制御する複数の重要遺伝子が同定され、その単離遺伝子を利用した育種素材の作出が進められている。しかしながら、もう一方の最重要な育種選抜形質である米の品質、特に炊飯米の食味や食感を制御する遺伝要因(遺伝子)のほとんどは明らかとなっていない。これまでの解析により、最近の良食味品種は炊飯米の粘りが強く柔らかく胚乳中の細胞壁分解酵素活性が低い傾向を示すことが明らかとなった。そこで、細胞壁などの新規の穀粒成分を改変することにより、炊飯米の物性を変化させて新しい食感を付与することが可能であると考えられた。本研究では、新規の食味遺伝子座(QTL)の検出や、胚乳の細胞壁成分に着目した解析により、炊飯米の食感や食味を向上させる遺伝要因を解明することを目的として、炊飯米食味の異なるイネ品種に由来する交配後代集団の遺伝解析を実施している。 今年度は、これまでに取得した研究成果の取りまとめを進めた。また、タンパク質含有率やアミロースタンパク質が同等だが、炊飯食味値が異なる水稲品種の交配に由来する4つの遺伝解析集団の合計435系統の評価を継続して、炊飯米食味を制御するQTLを収集した。
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