研究実績の概要 |
既に大豆遺伝子Glyma03g03360が煮豆硬度に影響を及ぼすペクチンメチルエステラーゼ(PME1)であることを明らかにし、さらに遺伝子発現データ等から新たに種子で発現するペクチンメチルエステラーゼ(PME2)に着目した。大豆品種「フクユタカ」のEMS突然変異系統と「エンレイ」とを交配し、世代促進をしてPME1, PME2両遺伝子の変異を有する系統を複数作出した。これらの変異はPME1, PME2のペクチンメチルエステラーゼ活性の失活を引き起こすことが塩基配列より推察されている。PME1, PME2両遺伝子変異系統の種皮の煮汁からは、PME1のみ変異を有する系統とほぼ同量のガラクツロン酸が検出され、細胞壁ペクチンの構成糖であるガラクツロン酸可溶性へのPME2変異の影響は見られなかった。長期保存した大豆から調製した煮汁に溶出したガラクツロン酸に関しては、保存時の温度条件による有意差は検出されなかった。一方、長期保存した大豆より調製した煮豆からテクノビット包埋切片を作製し、ペクチンに対して高い親和性のあるルテニウムレッドで染色・観察した結果、保存の温度条件により細胞壁の染色性に変化が見られ、現在さらに解析を進めている。PME1, PME2両遺伝子の変異系統については、2020年度当研究所ほ場で栽培・収穫したサンプルの煮豆硬度を測定し、異なる温度条件で長期保存中である。また、ペクチンの架橋に関与するカルシウムの種子中含量が異なる準同質遺伝子系統を作出し、煮豆硬度が有意に異なる結果が得られたので、保存による煮豆硬度変化等も同様に調べる予定である。
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