研究実績の概要 |
大豆種子を長期保存すると煮豆の硬さが上昇することが知られている。また、これまでの申請者らの解析から冷蔵保存より37℃の保存条件の方が変化が顕著なことも明らかになっている。今年度は主にこの長期保存変化にPME(ペクチンメチルエステラーゼ)2遺伝子が関与するか検討した。 2020年度当研究所ほ場で栽培・収穫した大豆種子を5℃及び37℃の温度条件で7ヶ月間保存し、保存前、保存後の煮豆硬度(沸騰水中10分加熱処理後の破断応力)を測定した。保存前の煮豆硬度に関して、PME1, PME2両遺伝子の変異系統とPME1のみの変異系統との間で有意差は検出されなかった。保存後、5℃及び37℃の煮豆硬度を解析したところ、PME1, PME2両遺伝子の変異系統、PME1変異系統ともに37℃保存条件で同様に煮豆硬度が上昇した。従って今回の結果や昨年度までの結果から、PME2遺伝子の変異は煮豆硬度の軟化に関与しないことが示唆された。 脱メチル化したペクチンの架橋に関与するカルシウムの種子中含量が異なる準同質遺伝子系統を「納豆小粒」と「兵系黒3号」の組換え自植系統より作出し、保存による煮豆硬度変化を同様に調べた結果、保存前は低カルシウム系統の方が煮豆硬度が低かったが、1年間の種子保存後は両系統とも煮豆硬度が上昇した。また37℃、1年保存した大豆種子を用いた煮豆硬度に関しては、両系統の煮豆硬度に有意差がなかった。これらの結果や昨年度までの形態学的解析から、ペクチンのメチルエステル化度以外の要素が煮豆硬度に影響を及ぼす可能性が示唆された。
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