2021年度は、浜通り地域の南相馬市(9水田。品種天のつぶ)、川内村(3。里山のつぶ、ひとめぼれ、他)、飯舘村(4。あぶくまもちを含む)、中通り地域の大玉村(8。コシヒカリ、天のつぶ)、玉川村(8。コシヒカリ、天のつぶ)、会津の会津若松市(13。コシヒカリ)の計45の農家水田で栽培・収穫された水稲を供試した。 米粒食味計で食味関連形質を計測した結果、浜通り、中通り、会津のそれぞれで、前年度と同様、精米のアミロース含有率、タンパク質含有率、食味値(参考)は、地域間で差異が認められたのに加えて、同一地域内の水田間でも差異が認められた。これらの差の要因は、品種によることのほかに、栽培方法による差異が大きいと考えられた。 走査電子顕微鏡で炊飯米の微細骨格構造を観察し解析した。その結果、表面では明るく観察される明部では、糊の糸が伸展した細繊維状構造や網目構造、膜状構造が認められた。表層では、表面の暗部にあたる部分で「おねば」の原因となる糊化デンプンが緻密に蓄積した層が認められた。中間部および中心部では、デンプンが細胞やアミロプラストをまたいで糊化した様相が観察されたが、糊化が細胞やアミロプラストの範囲でとどまった部分もあるなど、糊化の進展に差異が認められた。 本研究では3年の実施期間で、福島県内の浜通り・中通り・会津にまたがる計9の市町村、のべ105の農家水田で栽培・収穫された水稲について品質・食味および炊飯米の微細骨格構造の差異を調査・検討した。その結果、品種に加えて、気象・環境条件が異なる地域間差異、さらには施肥・水管理等の栽培方法による差異がきわめて大きいことが明らかになった。したがって、品質・食味が異なる福島県産米の高位安定化をはかるためには、適切な品種の選定加えて、オーダーメイド的な肥培管理技術の実践の必要性が考えられた。
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