研究課題/領域番号 |
19K05993
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
藤井 道彦 静岡大学, 教育学部, 教授 (50228962)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 干ばつ抵抗性 / 気孔反応 / 光合成活性 / NERICA / アジアイネ / カリウム / リン / 堆肥 |
研究実績の概要 |
本研究は、干ばつ条件下の圃場で栽培したNERICAとアジアイネにおいて、気孔反応と光合成活性を計測し、定量的に評価することを目的としている。 NERICAとアジアイネにおける品種間差異に加え、堆肥などの施肥間差異についても定量的に評価を行い、イネの干ばつ抵抗性の品種間差異と施肥間差異を、気孔反応と光合成活性から総合的に定量評価することを目的としている。 NERICAとアジアイネに対するカリウムと堆肥施肥の効果を検討した結果、カリウムと堆肥施肥により、地上部乾物重と収量が増加する品種・系統がみられた。カリウムと堆肥施肥により、気孔コンダクタンスが増加し、葉温が低下する傾向がみられた。収量は、気孔コンダクタンスならびに葉温と、有意な相関関係がみられた。気孔コンダクタンスは、葉温ならびに量子収率と有意な相関関係がみられた。葉温は、量子収率と相関関係がみられ、量子収率は葉厚と、また、葉厚はSPAD値と有意な相関関係がみられた。高い気孔コンダクタンス、低い葉温、高い葉厚とSPAD値の重要性と、干ばつ条件下におけるカリウムと堆肥の有効性が示唆された。 干ばつ条件下におけるNERICAとアジアイネに対するリンの効果を検討した結果、リン施肥により、地上部乾物重と収量が増加する品種・系統がみられた。収量は、気孔コンダクタンスと葉厚と有意な相関関係がみられた。気孔コンダクタンスは葉厚と、葉厚はSPAD値と有意な相関関係がみられた。高い気孔コンダクタンスと葉厚の重要性と、干ばつ条件下におけるリン施肥の有効性が示唆された。 NERICAとアジアイネの干ばつ抵抗性に対する堆肥とカリウムの追加施肥の影響のサーモグラフィーによる検出を検討した結果、カリウム追肥により群落表面温度が低下する傾向がみられた。カリウム施肥により干ばつ抵抗性が高まる可能性と、サーモグラフィーによる検出の可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の2021年度の研究計画は、以下のとおりである。 品種と施肥との相互作用(G×E)の定量的評価を行う。2019・2020年度の結果をもとに、品種と環境(施肥)との相互作用(G×E)を中心に検討を行い、3年間の結果を総合し、ポロメータによる気孔コンダクタンス計測から求められる気孔反応と、クロロフィル蛍光測定から求められる光合成活性における差異について詳細に検討を行い、特に、干ばつ抵抗性の品種・施肥間差異における相互作用(G×E)について、総合的に定量的に評価を行う。さらに、3年間の結果をとりまとめ、品種と施肥との相互作用(G×E)の定量的評価について得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う。 本研究の2021年度の進捗状況は、研究計画通りに進んでおり、予定通りにアジアイネとNERICAを供試し、また、元肥のカリの施肥量を増やした区も設け、品種と施肥の相互作用について検討を行った。 2021年度は、2019年度に行った、干ばつ条件下における品種とリン施肥の相互作用の結果ならびに、2020年度に行った干ばつ条件下における品種とカリウム・堆肥施肥の相互作用の結果から、干ばつ条件下における品種と施肥との相互作用により、生育・収量の増加がみられる品種・系統があり、干ばつ条件下における収量は気孔コンダクタンスと相関関係がみられ、気孔コンダクタンスは葉厚やSPAD値、葉温、量子収率と相関関係がみられることを明らかにし、オンラインで開催された第10回アジア作物学会議において、口頭発表とポスター発表を行った。 また、2020年度の結果については、干ばつ条件下における品種とカリウム・堆肥施肥の相互作用について、サーモグラフィーによる群落温度からの検討を行い、カリウム追肥の効果をサーモグラフィーによる群落温度から検出することができることを明らかにし、日本作物学会講演会において発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策は、以下の通りである。 2021年度は品種・系統間差異に施肥間差異を加えて研究を行ってきたが、2022年度は、品種と環境(施肥)との相互作用(G×E)を中心に検討を行い、品種・施肥間差異の定量的・評価を行う。2022年度は2021年度の結果をもとに、品種と施肥との相互作用について、より詳細に検討する予定である。また、量子収量を含めた多面的な生理形質の計測により、追加施肥による環境的効果と品種による遺伝的効果について、定量的に明らかにし、品種と施肥との組み合わせにより、干ばつ抵抗性を高めるために効果的な遺伝的・環境的要因について検討していく。 そして、気孔コンダクタンス計測から求められる気孔反応、クロロフィル蛍光測定から求められる光合成活性といった葉の生理的形質と、葉厚、葉重、非破壊的計測による葉面積といった葉の形態的形質の両面から、イネの干ばつ抵抗性を総合的に評価する。 干ばつ条件下における、イネの葉の生理的な質的形質と、形態的な量的形質の両面から、品種・施肥間差異を定量的に評価し、また、質的形質と量的形質の寄与程度について明らかにしていく。 2022年度は、2021年度の結果を踏まえ、品種と施肥との相互作用(G×E)の定量評価をう予定であり、品種と環境(施肥)との相互作用(G×E)を中心に検討を行い、4年間の結果を総合して、ポロメータによる気孔コンダクタンス計測から求められる気孔反応と、クロロフィル蛍光測定から求められる光合成活性、また、葉の伸長による葉面積の差異について詳細に検討を行い、質的形質と量的形質における、干ばつ抵抗性の品種・施肥間差異における相互作用(G×E)について、総合的に定量的に評価を行う。さらに、4年間の結果をとりまとめ、品種と施肥との相互作用(G×E)の定量的評価について得られた結果をとりまとめ、成果の発表を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究において、研究成果を発表するための学会参加旅費を計上していたが、新型コロナの感染状況の影響により、参加を予定していた学会がすべてオンライン開催となったため、旅費の支出が不要となり、次年度使用額が生じた。 次年度使用額については、翌年度における本研究の遂行に必要な物品費と、対面での開催が予定される学会における研究成果発表のための旅費・学会参加費として使用予定である。
|