研究課題/領域番号 |
19K05994
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
山口 武視 鳥取大学, 農学部, 教授 (30182447)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ダイズ / 出液速度 / 莢先熟 / 水分生理 |
研究実績の概要 |
研究代表者が保有しているダイズ約120品種・系統の中から、これまでの栽培データに基づき、生態型と早晩性および出液速度が異なる31品種・系統を用いて、出液速度と莢先熟との関係について検討し、さらに特徴的な品種に絞り込む計画とした。研究代表者が所属する大学の圃場において、4.2株/m2の栽植密度で播種し、無肥料で栽培した。茎基部からの出液速度は粒肥大始期(R5)に測定し、莢先熟の有無は11月末の収穫時に葉身が残っている株があれば莢先熟の品種・系統と判断した。供試した31品種・系統のうち、11品種・系統で莢先熟現象が認められた。これらの品種・系統と他の品種・系統の出液速度およびsink/source比を比較したが、特徴的な傾向は当該年度では見いだせなかった。 これらとは別に、「サチユタカ」と「星のめぐみ」を圃場条件下で栽培し、各品種の開花始期(R1)から成熟始期(R7)の間に計7回、出液を採種した。茎当たり出液速度は、「サチユタカ」で粒肥大盛期(R6)にかけて低下、R7で再び上昇したのに対し、「星のめぐみ」では生育とともに低下した。茎断面積当たりの出液速度では、生育期間を通じて「サチユタカ」よりも「星のめぐみ」の方が高い値で推移した。莢先熟は品種にかかわらず発生が認められたが、明渠排水溝から遠い区ほど発生が偏在した。莢先熟が顕著に発生した「星のめぐみ」の区の茎当たり出液速度は、発生が見られなかった区よりも高い値であった。逆に、「サチユタカ」では、莢先熟が発生した区の出液速度は低い値であった。これより、莢先熟現象は、ダイズの生理的反応が影響しているのではなく、一義的には排水不良などの土壌条件が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では32品種・系統を播種密度を変えて栽培する予定であった。発芽不良で31品種・系統となったが、計画通りの品種を用いて栽培することができた。しかし、栽植密度を変えることはせず、すべて同じ密度での栽培とした。これは、利用可能な圃場の面積が限られたことによる変更であったが、11品種・系統に莢先熟現象が見られたことから、当初の目的であったより特徴的な品種選抜に向けたデータは得られたものと判断した。しかし、当初でも計画しているが、圃場レベルでの試験は、複数年実施する必要があるので、次年度も同じ品種を用いて莢先熟とこれに関わる要因を調査する予定にしている。 別の実験で、莢先熟現象は、ダイズの生理的反応が影響しているのではなく、一義的には排水不良などの土壌条件が関与している可能性が見いだされたことは新たな成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、31品種・系統を用いて、より特徴的な品種選抜のための栽培および調査をしていく。さらに、今年度では実施できなかった、葉の着生と日射が出液速度に及ぼす影響の品種間差を31品種・系統を用いて、明らかとする実験を行う。これらに加えて、明きょ排水を設ける区と設けない区を設定し、土壌水分をセンサーでモニタリングしながら、同じ品種内でも莢先熟現象の発生の有無を確認する。これらと、根の水分供給能を代表させる項目として、茎基部からの出液速度を測定し、葉の着生の多少、sink/source比、土壌水分などの調査項目を用いて、莢先熟現象の発生との関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当該年度に必要なものはすべて購入し、実験も一区切りついたため、500円以下の残金であるので、次年度に繰り越すことが妥当と判断した。 (使用計画) 繰り越した資金は、令和2年度の物品費として計上し、農業資材等の購入に充てる予定である。
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