先行研究でダイズの莢先熟には、土壌水分の関与が示唆されたので、土壌水分に変化を与え、茎基部から出液速度を調査し、莢先熟と土壌水分および出液速度との関係を検討した。 先行研究で莢先熟が発生しやすい「タチナガハ」、「エンレイ」、「タチスズナリ」と対照品種として「サチユタカ」の計4品種を栽培した。圃場に深さ約40cmの溝を2本設置し、着莢始期から収穫期まで週1回、溝にかんがい水を満たした。溝からの距離を変えた条を処理として、各条間の土壌水分を測定した。 成熟期の平均莢先熟指数は「タチナガハ」3.8、「エンレイ」1.8、「タチスズナリ」2.1であり、対照品種の「サチユタカ」は1.1であった。土壌水分含水率の平均は地下10cmは8%、15cmは13%となり、地下15cmのほうが高くなった。溝からの距離による土壌水分に有意差はなかったが、溝に最も近い条よりも次に遠い条の方が地下10cm、15cmともにやや高い傾向にあった。すべての品種の着莢始期と粒肥大盛期ともに溝から3条と4条の草丈はほかの条に比べ小さくなっていた。 粒肥大盛期の個体当たり出液速度の平均は「タチナガハ」0.29g、「エンレイ」0.24g、「タチスズナリ」0.21gであったのに対し、「サチユタカ」は0.02gであった。成熟期では「タチナガハ」0.36g、「エンレイ」0.07g、「タチスズナリ」0.24g、「サチユタカ」0.07gとなった。粒肥大盛期、成熟期ともに「サチユタカ」の出液速度は小さく、莢先熟指数が高かった「タチナガハ」と「タチスズナリ」の成熟期の出液速度は高かった。粒肥大盛期、成熟期ともに出液速度に有意差は認められなかった。 以上のことより、莢先熟の発生には、土壌水分の影響は小さいと推察された。
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