研究課題/領域番号 |
19K05996
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
高橋 肇 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (70216729)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | もち性はだか麦 / キラリモチ / β-グルカン / 後期重点型追肥 / 遅れ穂 |
研究実績の概要 |
もち性はだか麦の子実中の水溶性食物繊維β-グルカンは、後期重点型追肥によって高まることが知られている。しかしながら、後期重点型施肥は、同時に遅れ穂を多く発生させることが問題ともなっている。遅れ穂発生のしくみを明らかにして、これを抑制しつつ、多収・高β-グルカン化となる栽培技術を確立するために3つの試験を実施した。 試験①:遅れ穂がいつ発生してなぜ遅れて出現するかについて、もち麦2品種を2019年に4回、2020年に5回播種して、分げつの発生節位を調査し、遅れ穂となる分げつがどのように発生するかについて調査した。試験②:肥料の施用処理により、遅れ穂の発生実態と収量性を調査した。試験③:安芸高田市のもち麦生産農家に実証試験を委託した。早期・標準・晩期播種について、収量を調査してもらい、収穫期とその1週前のサンプルを採取してもらった。 現在、試験①と②は計画通りに実施され、2019年度の研究成果も得られている。試験③では、2020年に現地で大雨の被害があったものの、早期播種でのデータは得られている。試験①では、2019年度において分げつの発生パターンを明らかにしている。分げつは、栄養生長期に発生する低次節位の1次分げつと、幼穂分化後に発生する高次節位の1次分げつさらには低次節の1次分げつから発生する2次分げつとの2種類に大別された。試験②では、緩効性肥料BBを施用したBB区は、窒素を単肥で分施した4-2-6-6区とほぼ同等の収量を示した。遅れ穂は、開花後2週目以降も増加しており、4-2-6-6区でとくに多かった。試験③では、収穫期の主茎および分げつの穂重が収穫期1週間前にくらべて、ともに重くなっていて収穫期がまだ早すぎると考えられる場合、ともに変わらないため収穫期が遅すぎると考えられる場合、分げつのみで重くなっていてこの一週間で分げつの登熟が進んだと考えられる場合とがみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、もち性はだか麦品種「キラリモチ」の遅れ穂発生のしくみを明らかにすることを目的とし、2019年播種分の調査を終え、2020年播種分の調査を実施しているところである。計画どおりに両年度とも遅れ穂となる分げつの発生時期と発生節位について明らかにすることができたが、そのなかで遅れ穂にのみみられる特徴をみつけることができた。遅れ穂の第1表は太く短いズングリとした形状をしており、この形状をもって登熟後半においても早期に出現した分げつと遅れ穂として出現した分げつとを区別することができるようになった。これは、試験開始当初では想定していなかった成果であり、この第1葉の形状をもとに遅れ穂を通常の分げつと分けて調査することで、より効率的に遅れ穂発生のしくみを明らかにし、発生を抑える栽培方法を確立することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、2020年に播種した試験について調査を進めている。調査にあたっては、研究の過程で明らかになった「遅れ穂の第1葉はズングリとした形状をしている」という基準を用いて通常の分げつと遅れ穂との数や生産量の違いを明らかにしていく。また、2021年秋にはこれまでと同じ設計の施肥試験を設計し、播種する。3作期の試験をまとめて成果とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナウィルス感染症拡大防止措置のために出席・発表予定の学会が中止あるいはオンライン開催となり、現地調査への出張回数も大きく減らしたために旅費の執行額が大幅に減額となった。繰り越し分は、2021年度の消耗品費の不足分を充当するのに使用する予定である
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