日本では漢方薬の需要が増加しているが,その原料となる生薬の大部分が中国からの輸入に依存しており,また生薬の市場価格の高騰から,今後は日本国内で栽培して生薬を確保する必要がある.生薬の一つである「カッコン(葛根)」はクズ[Pueraria lobata(Willd.)Ohwi]を原料としており,日本国内で消費量が多いために早急に日本国内での栽培技術を確立する必要がある.そこで,本研究ではクズの栽培技術を確立させるために,塩ビパイプで栽培した場合のクズの根系形成を明らかにするとともに,根中におけるデンプン含量の時期的推移についても明らかにするための実験を行った. 2021年の実験は,2020年と同様の栽培・調査を行ったが,クズの草丈および主茎長の伸長は移植後に緩慢であり,7月以降急激に伸長した.地下部生体重は,主根の伸長が最大となった後の9月下旬~10月下旬において最も増加した.また,クズ主根は初めに基部が肥大化し始め,その後は徐々に肥大化を続けながら中部および先端部についても急速に肥大化してゴボウのように真っすぐな主根となった.1.0mおよび0.5mの長さの塩ビパイプ内でクズを栽培したが,根中のデンプン含量は塩ビパイプの長さに関係なく同程度の含量であった.2ヵ年の栽培実験において,主根の乾物重とクズ根中のデンプン含量との間には有意な正の相関が見られたが、根の乾物重とクズ根中のデンプン含有率との間に相関は見られなかった. 以上より,塩ビパイプを利用してクズ個体を栽培する場合0.5mの塩ビパイプにおいて可能であること,また主根が急速に肥大化し,同化物が地下部に転流・蓄積する10月末以降の時期に根を回収するのが最適であるものと考えられた.
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