国頭マージと黒ボク土は共に酸性土壌である。国頭マージでは黒ボク土に比べて土中有機物が少ない特徴がある他、無機リンが鉄型が主体であり、アルミニウム型リンが主体の黒ボク土と異なる。両土壌は施肥リンもこれら形態のリンとして固定される。過去に採択された課題で、ソバはアルミニウム型リンの利用性が高く、鉄型リンの利用は非常に少ないことから国頭マージでは黒ボク土よりソバの生育量と収量が低くなることを明らかにした。 これらの成果を踏まえ、両土壌での適切なリン施肥量を明らかにし、子実収量と各種成分からの品質への影響を明らかにすることを目的とした。その結果、国頭マージでは4gから8g/m2程度のリンを施肥する必要があることが明らかになり、この施肥範囲であればリン施肥量の減少で子実の各種成分は低下しないことが明らかにできた。黒ボク土でも同量の施肥が適当とされる結果を得られたが、試験に用いた黒ボク土はリン肥沃度の比較的低いものであった。そのため、過去の肥培管理の違いでリン肥沃度のの大きく異なる圃場でのリン施肥量を変えたリン施肥反応試験を行った。この試験は計画通り実施したが、コロナ禍の影響もありその解析は研究計画を延長して行った。 その結果、熊本県合志市の農研機構九州沖縄農業研究センター敷地内の5圃場で実施したソバのリン酸施肥試験より得られたソバ子実重データについて、2022年度に整理・解析を進めたことにより、圃場によってリン酸施肥の効果が大きく異なり、リンの集積した圃場でのソバの収量が低下し、その原因として収量指数の著しい低下から茎葉過繁茂が原因と考えられ、近年の日本の農耕地で問題になっているリン過剰がソバの収量にも影響していることが明らかになった。そのため、黒ボク土でのAl型リン含有率が1000mg/kgを超える場合にはリン無施肥での栽培が可能と考えられた。
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