研究課題/領域番号 |
19K06003
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
川満 芳信 琉球大学, 農学部, 教授 (20192552)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 節水灌漑 / 葉内CO2濃度 / サトウキビ / 土壌水分 / スマート農業 / 蒸発散量 / 蒸散速度(重量法) / 光合成速度 |
研究実績の概要 |
従来,圃場への潅水は,タイマーを利用し一定時間内に行う方法や土壌中に設置した水分センサー(VWC, pF)と蒸発散量に基づいて行う方法等がある.しかし,水資源に制限のある島嶼地域では,効率的な潅水技術の開発が求められている.水分ストレス(干ばつ)に対する作物の応答に関しては品種,前歴,土壌,微気象条件によって様々である.本研究では,葉の活性状態を総合的に表現できる葉内CO2濃度(Ci)に着目し,その情報と微気象データ,土壌水分状態に基づいて潅水のタイミングと潅水量を決定し,作物の水利用効率の最適化を計ろうと企画した課題である. Ciは水分ストレスなどに敏感に反応するため植物の健康状態を診る「聴診器」の機能を有する.そこで,土壌水分,微気象データに加えCi も同時計測し,植物の健康状態に基づいて灌漑設備をコントロールすることにより精緻な節水灌漑が実現出来ると考えた.通常,Ci は高価な光合成蒸散同時測定装置を用いて各ガス交換パラメーターに基づいてコンピューターがリアルタイムに計算する. 我々は安価な非破壊でしかも長期間 の連続測定が可能な新しい「Ci カップ」を試作・開発した.本研究では,実測Ci(Ci-m)システムが灌水の制御のターゲットとして制御系に組み込めるか否かを検討し,最終年度では実際に圃場で応用することを目的としている. 2020年度は,C4植物としてサトウキビを,C3植物としてニトベギクを供試して,ガラスハウス内でCi-mの計測を試みた.また,土壌水分の変化に伴う重量法蒸散速度,サップフロー,Ci-m の変化を並行して計測した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
C4植物としてサトウキビを,C3植物としてニトベギクを供試して,実測Ci(Ci-m)をガラスハウス内で連続して計測した.また,ポットへの潅水を停止して土壌水分ストレスを与えた場合,Ci-mがどの様に変化するかも詳細に検討した. その結果,C4植物であるサトウキビのCi-mは,十分な潅水条件下(pF2.0)では15~20ppmだが,潅水を停止しpF4.0になると8~10ppmに低下した.これは,Ci カップを葉の裏面(背軸)にセットしたため,向軸側の気孔から取り込まれたCO2は葉肉細胞のPEPcaseにほぼ捕捉され,背軸まで到達していないことが明らかになった.また,水ストレスの進行に伴うCi-mの変化はほんの僅かであり,更なるデータの蓄積が必要である. C3植物のニトベギクのCi-mは,pF2.0では250~300ppmにpF4.0では160~200ppmに低下した.水ストレスの進行に伴うCi-mの変化は100ppm程あり,灌水制御のターゲットとしての活用の可能性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,サトウキビ以外のC4植物としてソルゴーを加え,C3植物としてトマトを加え,Ci-mの種間差異を明らかにする.また,Ci-mデータ(アナログ信号)を用いた灌水制御装置を開発し,その実用化を目指す.とりわけ,水利用効率の向上が計られるか,従来法との比較を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で国内外への出張が制限され,旅費が消化できなかった.2021年度には国際会議が再開されるため,旅費として利用予定である.また,物品費としてサップフロー計を追加したい.
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