• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

イネにおける子実窒素集積性の実証とその生理・生態学解明のための基礎研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K06004
研究機関石川県立大学

研究代表者

塚口 直史  石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40345492)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードイネ / 窒素 / QTL / 窒素転流
研究実績の概要

イネにおいて、窒素の転流や蓄積過程に関する潜在的能力を反映する子実への窒素集積性は、登熟期における子実と栄養器官の間の窒素分配に強くかかわり、窒素利用効率や収量性に強く影響すると考えられる。これまでに子実窒素集積性の定量的評価法を開発し、本評価法に基づいて水稲多収品種であるモミロマンとタカナリの交配によって得られた解析集団を用いて行った解析により、子実窒素集積性への関与が推定される2つの染色体領域を見出した。本課題では、推定された染色体領域に関する準同質遺伝子系統(NILs)の作出、NILsを用いて推定領域の子実窒素集積性への関与の実証および窒素吸収や分配に関わる生理・生態的形質への影響を明らかにすることを目的とする。
2019年度におこなった戻し交配によって得られたBC4F1世代を冬季に栽培し、背景領域の遺伝子型の選抜に基づいて、各領域に関して1個体選抜した。選抜した個体を自殖させ、各個体について100粒程度のBC4F2世代の種子を得た。BC4F2世代の幼苗について、目標とする染色体領域における遺伝子型に基づいて選抜を行い、目的とする領域がタカナリ型ホモの個体およびモミロマン型ホモの個体をそれぞれ数個体選抜した。選抜された個体を圃場栽培し、BC4F3世代の種子を得た。得られた種子を用いて次年度子実窒素集積性に関する実証実験を行うとともに関連形質の調査を行う予定である。またそれらの個体を用いた予備実験により、当該領域が子実窒素集積性に関与することが強く示唆された。
関連形質の調査に用いるためにドローンに搭載したマルチスペクトルカメラによる植生指数と幼穂形成期の窒素吸収量および籾数との関係を調査した。緑色光と近赤外光の反射率を用いた植生指数と窒素吸収量との間に線形の関係が得られた。一方、その植生指数と籾数の関係にも線形関係は認められたもののその関係は年次間で異なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究のための材料育成は順調に進んでおり、計画通り2021年度に圃場実験をおこなうことができる。本年度子実窒素集積性への関与が推定された2つの染色体領域について、それぞれタカナリ型およびモミロマン型ホモの系統を用いて、器官別の乾物重、期間別の窒素量、収量およびその構成要素、さらに関連すると考えられる登熟期の葉色の推移等についての調査を行う予定である。また予備実験の結果、当該染色体領域が子実窒素集積性に強く関与することが強く示唆された。
一方マルチスペクトルカメラによる窒素吸収量および関連形質の評価についても順調に進んでいる。窒素吸収量と緑色光および近世外線の反射率を用いた植生指数との間に高い相関関係がえられているものの、その植生指数と籾数との間には各年次では高い相関は得られるものの年次間差が認められた。したがってこの関係における年次間差を生み出す要因解明に向けた解析を引き続き行う。
以上のように全体的に順調に進んでいる。さらに研究当初には想定していなかったが、子実窒素集積性に関与すると推定された染色体領域は登熟にも関与することが示唆された。このことから、着目している染色体領域の解析により、窒素と炭素の子実への分配を解明する手がかりが得られることが期待される。

今後の研究の推進方策

2021年度は候補とした2つの染色体領域の子実窒素集積性への関与の実証を目的として圃場実験を行う。群落状態で栽培するために十分な種子が得られたため、2あるいは3水準の窒素施用量で栽培し、器官別乾物重、窒素量および収量とその構成要素を調査する。それらのデータから子実窒素集積性の指標となるパラメータを求めて遺伝子型との対応を明らかにする。さらに、注目する染色体領域がどのように登熟に関与するかの手がかりを得るために、登熟に関わるこれまでに報告された様々な形質の調査も併せて行う。
窒素吸収量や籾数等の形質調査にドローンを用いることは、まだ十分な精度が得られていないため本研究では行わない。ただし、本研究では実際に窒素吸収量や籾数等の形質を調査するため、ドローンを用いて植生指数を求めておくことで、植生指数とこれら形質との解析が可能である。特に籾数に関しては年次間差が生じる要因を明らかにするためにも今年度同様の調査を行う。
本課題は今年度が最終年度であるため、研究期間内に材料としては用いられないが、更なるファインマッピングのために戻し交配を継続して行い、期間後のさらなる研究展開の準備を行う。

次年度使用額が生じた理由

コロナにより、予定していた旅費の支出がなかったことが大きい。次年度は実証実験および遺伝子型選抜のため、試薬の購入費が見込まれるため、前年度余った旅費および次年度に予定している旅費は試薬等の物品購入費に充てる。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] 空撮によって得られた生殖成長期の植生指数によるダイズ子実収量の解析2021

    • 著者名/発表者名
      丹保彩香・島田雅博・吉藤昭紀・今本裕士・永畠秀樹・藤原洋一・塚口直史
    • 雑誌名

      日本作物学会紀事

      巻: 90 ページ: 印刷中(採択済み)

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 石川県における水稲多収品種の生産費が最小になる育苗箱当たり播種量および栽植密度2021

    • 著者名/発表者名
      宇野史生・島田雅博・中村弘和・吉田翔伍・塚口直史
    • 雑誌名

      日本作物学会紀事

      巻: 90 ページ: 印刷中(採択済み)

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 水稲の登熟期の掛流し灌漑が水田の窒素環境に与える影響2020

    • 著者名/発表者名
      西田和弘・岩崎里子・塚口直史・吉田修一郎
    • 雑誌名

      農業農村工学会誌

      巻: 88 ページ: 15-18

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi