現在までに異なる冬作管理と耕起法を組み合わせるなど輪作体系の工夫から,土壌やトウモロコシに感染するAM菌の種構成が変化する要因の条件整理を試みている。実際,温暖地において冬作物・夏作物といった輪作体系と耕起管理とを組み合わせた作付体系とAM菌の群集構造との関係性について検討した報告は少ない。そこで,本申請課題では冬作物管理(ヘアリーベッチ,ダイコン,休閑)と耕起管理(ロータリ耕および不耕起)の違いが後作トウモロコシ根に感染するAM菌の群集構造に及ぼす影響を3年間に渡り調査した。土壌,冬作物と後作トウモロコシに感染するAM菌の群集構造はアンプリコンシーケンスにより解析した。3年間に渡る輪作体系の結果,ロータリ耕,不耕起処理ともに冬作物を導入した区で休閑区に比べ,土壌理化学性が改善されたことでトウモロコシの第6葉期の地上部乾物重,リン吸収量が顕著に増加することを確認した。トウモロコシの収量,地上部総乾物重も生育初期と同様の傾向を示し,ロータリ耕,不耕起処理の両処理区で冬作物導入による後作トウモロコシへ生育促進効果を確認した。また,トウモロコシに感染するAM菌群集の年次間,冬作管理,耕起処理による変動を3年間に渡る冬作管理と耕起法を組み合わせた輪作体系から明らかにした。この群集構造の変動はトウモロコシの生育,収量にも影響する可能性がある。ただし,本課題遂行中において,トウモロコシの生育,収量に関与する中核AM菌群に一定の傾向を見出すことはできなかった。また,畑土壌中にはAM菌以外の様々な機能性微生物が存在するため,今後は土壌微生物群集全体の制御からトウモロコシの生育を改善する要因を整理していく必要があると考えられる。
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