研究課題/領域番号 |
19K06009
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
川東 広幸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター, ユニット長 (80373249)
|
研究分担者 |
春日 重光 信州大学, 学術研究院農学系, 教授 (50345758)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ソルガム / 再生性 / 収量性増大 / バイオマス / 飼料作物 / C4植物 |
研究実績の概要 |
ソルガム(Sorghum bicolor (L.) Moench)は、日本では牛の飼育用の飼料として利用される夏作物であり、国産飼料の自給率を上げるためにも重要な作物です。本研究ではソルガムの単位面積あたりの収穫量を上げるために、ソルガムの再生能力を上げる遺伝子と葉の面積を増大させる遺伝子とを決定し、それらの遺伝子が収量へどのような効果をもたらすか、その機能を解明することを目的として研究を行います。 我々はこれまでの研究で、再生性に優れ葉身長の長いスーダングラスの市販品種(GreenLeaf)と再生性が不良で葉身長の短いソルガム系統 (那系MS-3B)の交配後代から得られた組み換え自殖系統を用いて、再生性に関与する量的形質遺伝子座(Quantitative trait locus、以下QTL)で、第10染色体に座乗するqRG10と葉身長を伸長させることで葉面積を増大させるQTL(qLL10)を見いだしていました。 2019年度はソルガムの再生性qRG10についてはGreenleafと那系MS-3Bの交配集団を使用し、研究を行いました。また、葉面積qLL10については2018年までの結果から別の集団の方が出穂の影響を受けずに解析ができることが判明したため、葉身長の長いJN43と短い那系MS-3Bの残存ヘテロ領域を持つ戻し交雑系統後代を使用して、遺伝子の座乗領域を狭める作業を行いました。 ソルガム集団の栽培、表現形質測定は信州大学農学部で行い、DNAマーカーを利用した遺伝子解析は農研機構にて実施しました。その結果、それぞれのQTLを約1.2Mの領域に絞り込むことができました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では第10染色体短腕の異なる位置に座乗するqRG10およびqLL10の座乗領域をまず狭めるためのマッピングを実施した。再生性qRG10および葉長qLL10はともにソルガム第10染色体短腕の比較的近い位置に座乗し、両者の領域は重複を含め最小8、最大16Mb程度離れていると考えられたが、2019年度の解析で両者の座乗位置が明確に分離し、それぞれの候補領域を約1.2Mに絞り込むことができた。 2019年度は気象条件の影響などから、再生性の試験結果のばらつきが大きく、候補領域を狭めるには再度の検定が必要と考えられた。また、葉面積についてはJN43と那系MS-3B由来の集団を利用したところ候補領域内の組み換え個体が多数得られたため、qLL10の候補領域を約5Mから1.2Mに大幅に絞り込むことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度はGLと那系MS-3BおよびJN43と那系MS-3Bの持つ戻し交雑系統後代から2019年のマッピングで選抜された個体からの種子を用いて信州大学にて圃場栽培調査を行い、表現型の確認を行う。 今年度については新型コロナウイルス対策のために人的資源の不足や作業上の混乱や遅延が発生する恐れがあることから実験計画を大きく広げず、後代検定による表現型の確認を基本として実施することとする。 本年度夏期の試験結果をもって、第10染色体が固定された系統を用いて、葉分化時の茎頂付近、及び脇芽のmRNA seqを行い、遺伝子発現解析を冬期に温室環境下で行う計画とする。これについても、新型コロナウイルスの再流行などが見られた場合には、適宜見直しつつ実験を遂行する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:mRNAseq解析の費用が高額であるため、必要なデーターを得るためにはサンプル数を絞りかつ最低限必要な数の解析をまとめて同一条件で実施する必要がある。そのために2019年度、2020年度の栽培試験結果から染色体固定系統を選抜する時間が必要な点およびmRNAseq解析費用を確保するため必要がある点から、資金を次年度使用とした。 計画:2020年度夏期のソルガム栽培試験結果をもって固定系統を選抜し、2020年度冬~2021年度春の時期に選抜系統を温室条件下で栽培しmRNA seq解析を実施する。
|