本研究では、『ゲノムの倍数化とヘテロ性の高さにより遺伝解析が困難な栽培バラにおいて、いかに有用形質を高精度にマッピングし、育種に利用可能なDNAマーカーを開発するか』という学術的「問い」の解決を目指し、ゲノムワイドに遺伝子型判定を行うGRAS-Di解析を四倍体バラ交雑集団に適用することでトゲ無し形質のマッピングと形質判別用DNAマーカーの開発を行う。 本年度は、前年度に実施したGWAS解析で形質と有意な相関を示す一塩基多型(以下、SNP)が複数座乗するピーク領域が検出されたBC1F1集団(’松島3号’にF1 No.6を戻し交雑したもの)を対象に、節間に形成されるトゲ数の計測とGWAS解析を実施した。その際、前年度にも用いたOBDH (Rosa chinensis Genome v1.0) に加えてRcHm (Rosa chinensis 'Old Blush' homozygous Genome v2.0) も参照ゲノムとして解析を行った結果、OBDHとRcHmの両者で第3染色体上の同一領域に最も顕著なピーク領域が検出され、RcHmを用いた場合のみ第5染色体上にもピーク領域が検出されることを明らかにした。一方、研究期間を通して検討を進めていたTobacco rattle virus (TRV) を用いたバラのVIGS系については、細かな条件検討を重ねたものの、残念ながら感染個体の獲得には至らなかった。
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