研究課題/領域番号 |
19K06019
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
後藤 丹十郎 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (40195938)
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研究分担者 |
田中 義行 京都大学, 農学研究科, 准教授 (20704480)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 露心花 / 舌状花 / 管状花 / 夜温 / 発育ステージ / 光強度 |
研究実績の概要 |
本研究では,ダリア露心花の発生メカニズムを解明するとともに,露心花の発生を減少させる最も実用的な方法を開発する。 露心花の発生程度が異なる ‘かまくら’(発生程度:甚),‘ミッチャン’(中)と‘黒蝶’(発生程度:無)を用いた。 露心花発生に及ぼす夜間低温遭遇時期の影響(研究代表者後藤担当):8月,9月の異なる発蕾時期に,20℃の夜間冷房を行ったところ,いずれの時期においても,舌状花数,切り花重,切り花長を増加させた.8 月に発蕾する場合に露心花の発生を抑制する効果があり,9 月以降に発蕾する‘かまくら’,‘黒蝶’では露芯花が発生せず,‘みっちゃん’では露心花の発生を抑制する効果がなかった。これは8月と比較して日中の気温が低いことや日射など他の要因が関係している可能性があるので詳細に検討する必要がある。 露心花発生に及ぼす日射強度の影響(研究代表者後藤担当):発蕾の前後に70%の遮光を行ったところ,‘黒蝶’では影響が見られなかったが,‘かまくら’では,発蕾以前の遮光によって管状花数には影響しないが,舌状花数が減少し,露心花が増大する傾向が見られた。同化産物の減少によって,花序の構成に影響が見られたものと推察された。 露心花発生に関与する遺伝子の探索(研究分担者田中担当): 露心花発生程度が高い‘かまくら’の発達段階の異なる蕾組織からRNAを抽出し、RNA-seqを行った。昨年度の‘黒蝶’のデータと合わせて、各遺伝子の転写量を算出し、舌状花の発達に伴って発現変動する遺伝子群の同定を行った。同定した遺伝子群には、形態形成に関わる転写因子が含まれていた。今後はこれらについて詳細に発現解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の判定に至った理由は以下の通りである。 順調に進展している部分として,以下のことが挙げられる。 高温長日期 の露心花の発生には高温が大きく関与していると考えられることから,夜温を低下する実験を行なったところ,夜温を20℃まで低下させることにより,8 月に発蕾する場合に露心花の発生を抑制する効果があり露心花発生が大きく軽減された。サイトカイニン散布により,露心花発生が軽減されたが,奇形花が増大した。植物ホルモン散布は,現実的ではないと考えられた。 遮光によって舌状花が減少し,露心花が増大する傾向が見られたことから,花芽発達時期の同化産物の供給量が舌状花数に影響を及ぼすことが明らかになった。 露心花発生程度が高い‘かまくら’のRNA-seq解析により、舌状花の発達に関与しうる転写因子を見出せた。
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今後の研究の推進方策 |
露心花の発生を減少させる最も実用的な方法を開発する。高温長日期に夜温を低下する実験を行なったところ,夜温を20℃まで低下させることにより,露心花発生が大きく軽減されたことから,いずれの発育ステージの低温が露心花軽減に最も影響が強いか明らかにする。 高温期において遮光による舌状花数の減少と露心花の増大が見られた。この要因として,同化産物の転流が関与している可能性が考えられるので,生育適温時期においても,同様の効果が見られるか明らかにする。 同定した遺伝子群には、形態形成に関わる転写因子が含まれていた。RNA-seq解析で見出した転写因子について、詳細な発現解析を行い、舌状花の発達との関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため,6月まで研究が満足にできず,発育ステージの影響の実験をすることができなかった。また,2月以降の暖冬により,当初予定していた暖房費が減少した。 これらの理由によって,生じた経費を,2021年度に加えて実験を行う。また,かまくらの遺伝子解析を集中して進める。
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