これまでに、リンドウの花の開花運動は水チャネル・アクアポリンPIP2の機能に依存していることを明らかにしている。さらに、リンドウPIP2は温度や光刺激に応答した細胞内カルシウム濃度の上昇によって活性化されるCPKによってリン酸化される可能性を見出している。そこで、本年度は、まず、同定したCPK依存的なPIP2のリン酸化が、PIP2のチャネル活性の制御に関与しているかどうかを前年度に確立した酵母スフェロプラスト系を用いて解析した。その結果、CPK依存的なリン酸化はPIP2の水チャネル活性を優位に増大させた。さらに、VIGS法によってCPK遺伝子の発現を抑制させたリンドウ個体を作出し、花の運動性を評価したところ、遺伝子発現抑制個体においては、PIP2のリン酸化レベルが低下し、さらに、開花運動の遅延が観察された。一方、花の閉鎖運動においては、CPKやPIP2遺伝子機能の関与が認められなかったことから、花の閉鎖運動には主に他のアクアポリンが機能を果たしてることが推測された。これらのことから、少なくともリンドウの花の開花運動には、CPK依存的な水チャネルPIP2のリン酸化および活性化によって制御されており、さらに、温度と光刺激によってもたらされる細胞内カルシウム濃度の一過的な増大が開花のトリガーとなっていると考えられる。
|