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2019 年度 実施状況報告書

高温期のトマト肥大不良果発生における温度反応特性の解析

研究課題

研究課題/領域番号 19K06025
研究機関国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構

研究代表者

長菅 香織  国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 上級研究員 (30370612)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードトマト / 高温 / 果実肥大 / 遺伝子発現
研究実績の概要

本研究では、トマト夏秋期生産における不安定要因のひとつである肥大不良果の発生について、高温下の果実肥大特性解明および関連遺伝子高発現条件の特定により温度反応特性を明らかにし、回避技術の開発に役立てることを目的とする。これまでに肥大不良果の発生には開花から果実肥大開始までの温度が大きく影響することを明らかにし、過酷な高温下では果実肥大せずに長期間果房に残る未発達花が多発し、果実肥大開始以降の日数が顕著に短くなるため多くは小果に至ると考えられた。従って、肥大不良果発生要因の解明には果実発達初期の温度と未発達花発生等果実発達との関係を明らかにすることが重要である。
そこで、‘桃太郎8’、‘CF桃太郎ヨーク’、‘CF桃太郎はるか’、‘CF桃太郎ファイト’、‘りんか409’、‘麗容’、‘麗夏’、‘冠美’、‘THY102’、‘THY113’、‘鈴玉’を6~12月に温室内で養液栽培し、未発達花と肥大不良果の発生について解析した。気温なりゆき区および7~9月には細霧冷房区を設け、振動授粉を行った。
いずれの品種も果重、種子数および開花から果実肥大開始までの日数には相関がみられた。品種により異なるが、開花から果実肥大開始までが9日以上の場合、100g以下の肥大不良果となる傾向がみられ、この期間の日平均気温は27.9℃であった。また、同期間が38日以上の場合には単為結果を示し40g以下となる傾向がみられ、この期間の日平均気温は28.5℃であった。細霧冷房により8品種において肥大不良は軽減され、細霧時間における気温は気温なりゆき区では32℃、細霧冷房区では30.2℃であった。以上より、品種により違いはあるが、概ね日平均気温を28℃以下、日中気温を30℃以下に保つことにより、開花から果実肥大開始までの期間、すなわち未発達花として果房に残る期間は短縮され、肥大不良果の発生は軽減されると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、トマト夏秋期生産における不安定要因のひとつである肥大不良果の発生について、高温下の果実肥大特性解明および関連遺伝子高発現条件の特定により温度反応特性を明らかにする計画である。初年度は、夏秋期の温室内において国内主力品種を栽培し、高温下の果実肥大特性について形態的な解析を中心に行った。その結果、肥大不良果の発生に深く関わると考えられる未発達花について、国内品種における発生温度や果実肥大不良程度との関連性を見出すなど、当初の計画どおりに進捗していると考える。

今後の研究の推進方策

今後は、既に選定している肥大不良果発生関連遺伝子の発現変動を利用し、肥大不良果発生要因となる高温条件の解明を進める。これまでに組織特異的であり、果実発達初期に高温発現する高温応答性および細胞周期関連遺伝子を選定している。これらの遺伝子の高温発現に連動して収穫果実重は減少したため、選定した遺伝子の発現変動と肥大不良果発生は密接に関わっていると考えられた。従って、選定した遺伝子が高発現する高温条件を明らかにすることにより、肥大不良果発生条件の特定に繋がると考えられる。また、選定した遺伝子は果実発達初期に高温発現が高まるため、結果を得るまでに長い期間を要する従来の栽培試験に比べて、非常に効率的に果実肥大に対する高温の影響を解明できると考えられる。
そこで、高温遭遇パターンや温度域を組み合わせた多様な温度制御下で肥大不良果発生関連遺伝子の発現変動を比較解析し、これまでの形態解析により明らかにされた果実肥大特性との整合性から肥大不良果発生条件を解明する。さらに温度制御すべき果実発達段階や適正な温度条件を検討し温室における栽培検証によりそれらの特定を進め、トマト夏秋期生産において効果的な温度制御法の開発に役立てる。

次年度使用額が生じた理由

消耗品類が当初計画より安価で購入できたため。次年度分の助成金と合わせ、遺伝子発現解析および栽培試験における消耗品を購入する予定である。

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公開日: 2021-01-27  

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